ノーブルな雰囲気漂う
ベテラン上位ランカー

 ノーブルな雰囲気が魅力の桐生(きりゅう)さんも、愛本店を支えるベテランホストのひとり。美島さん同様、上位ランカーとして素晴らしい記録を持つ彼の本音にも迫ってみた。

◆相談役・桐生さん

 愛知県出身の桐生さんはソフトな物腰の、まるで貴婦人になったかのようなエスコートで夢の時間を味わわせてくれるスマートな紳士だ。

 社交ダンスのできるホストクラブで働きたいと愛本店の門を叩き、以来「この店でしか働けない」と言い切る、愛本店への“愛”に溢れたベテランホストである。

 桐生さんを指名する来店客は概ね50代以上の女性、中には80代のマダムもいらっしゃるという。「若い子たちみたいな色恋の駆け引きは、もういい」と言うだけあって、落ち着いた“大人”のマダムたちから人気がある。

 ホストという仕事をする上でのモチベーションは「特にない」と笑っていたが、そうした飾らない自然体の姿も彼の大きな魅力のひとつなのだろう。

 来店客には「生きがいや、明日からまた頑張ろうという気持ち」を与えたいと、桐生さんは言う。誰しも大なり小なり悩みはある。どんなに小さな愚痴でも構わない。桐生さんは真摯に耳を傾けてくれるはずだ。

 聞き上手でありながら、ホストとして“信頼”を重んじている桐生さんに感じるのは大らかな包容力。

 話を聞くのはもちろんのこと、「聞き流すことは絶対にしない、可能な限りきちんとしたアドバイスをする」ことを心掛けているそうなので、「すっきりした」、話ができて「ホッとした」と満足して帰る女性客が多いというのも頷ける。

 1プレイヤーとしてではなく、今後は経営者としての道を視野に入れているという桐生さん。自身が手掛ける店も、落ち着いて遊べる“大人の女性のため”のホストクラブにしたいそうだ。

 経験がなければ訪問しづらいと思われがちなホストクラブだが、「働く女性は入りやすい」場所だと桐生さんは言う。「ぜひ一度、社会勉強だと思って来てみて欲しい」とのこと。

 来店時の憂いを忘れ、笑顔で帰っていくお客様を見送ることに誇りを持つ桐生さんのエスコートに身を任せられるのは、彼が経営者としてのフィールドに進むまでの残された僅かな時間だけであることが、少々惜しまれる。

2020.01.02(木)
文=木間のどか
撮影=近藤健嗣、松本輝一
動画撮影・編集=松本輝一