私生活では4歳の娘の母
エトワールになったばかりの頃は、マチアス・エイマンと組むことが多かったが、ここ数年は主にマチュー・ガニオと踊っている。
日本でも人気の高い「王子様」マチューと美しいドロテは、舞台でも理想のペアに見えるが、マチューを取材したことのある筆者は「夢見るような」彼のキャラクターと、てきぱきと物事を進めるドロテは正反対の性格に思えてしまう。
「確かに性格は違うけれど(笑)、マチューと私には共通点があって、音楽の聴き方がとても似ているんです。音楽性が一緒……つまり音楽を聴く耳が同じなんですね。これは本当に些細なことなんですけど、ダンサーによって異なる感覚で、パ・ド・ドゥのときの音楽がちょっと早い、あるいはちょっと遅い、というときに、音楽に乗りなおすときの呼吸感があるんです。言葉には出しませんけれど……どのダンサーとも共有できるものではないから、マチューとは気が合うのだと思います。練習でも、パートナーによっては『今やりたくない』というときに『もっとやろうよ』と言ってくる人もいるのですが(笑)、マチューとはお互いのタイミングが一致してストレスが生じないんですね」
私生活では一児の母。4歳の娘さんとプールで遊ぶこともある。「人生はバレエだけ」という張り詰めたタイプではなく、プライベートも充実している。
「大切なことはバランスです。食べ物にしても、一日中野菜だけ食べていても栄養が不足してくる。ダンスもトレーニングは大事ですけど、私たちの日々の生活の中にも、表現を豊かにしてくれるものがあるんです。パリ・オペラ座では42歳でダンサーとしてのキャリアは終わりますから、いずれは私も『ダンスがなくなる』生活がきてしまう。8歳からダンスをやってきて、そこから何もない世界に突き落とされてしまうのか、それ以前に作り上げていた豊かな世界にいるのか……42歳になってダンス以外に何をしたらいいか分からなくなったら悲しいですよね。現役で踊っている今でも、ダンスしかない生活だとモティベーションを保ち続けるのは難しいですよ」
2018.11.08(木)
文=小田島久恵
撮影=深野未季