パワフルかつ柔軟な音楽性で
同年代からひとつ頭抜けた存在
1994年千葉県出身。東京藝術大学音楽学部4年に在学中。2014年、第19回バッハ国際コンクールにてアジア人初の優勝および聴衆賞を受賞。これまでに、富川歓、中澤きみ子、ジェラール・プーレ、澤和樹に師事。ソロ、室内楽、オーケストラとの共演など、国内外で幅広い演奏活動を続けている。
1994年生まれ。早熟な才能をもつ天才肌のヴァイオリニストとして10代の頃から演奏家活動を続けてきた岡本誠司。
パーフェクトな技術に加え、広いレパートリーと作品の深い解釈が同年代の演奏家からは頭ひとつ抜けている。
このインタビューが行われた直後、ポーランドで開催されたヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで見事2位を受賞した。ピアノのショパン国際ピアノ・コンクールに匹敵する、由緒あるヴァイオリンのコンクールで優秀な成績を収めた岡本。自然体そのもののこのインタビューからも、器の大きさがうかがえる。
将来有望なヴァイオリニストとして期待されてきた彼が、さらに大きな注目を浴びるきっかけとなったのが20歳で参加したバッハ国際コンクールでの優勝だった。日本人初の優勝でクラシック界は大いに沸いたが、当時から彼は冷静に日本とヨーロッパの音楽環境や教育の違いを観察し、演奏にもクールな見通しの良さがあった。
現在は東京芸大音楽学部器楽科に通い、多忙なコンサート活動と学業を両立させている。コンクールにも参加し続け、2016年6月に行われた第6回仙台国際音楽コンクールではヴァイオリン部門の6位に入賞した。
「仙台国際音楽コンクールは協奏曲がメインなので、予選からオーケストラと共演できるのが嬉しかったです。仙台フィルとの共演で、指揮者は広上淳一先生でした。短期間にあれだけプロのオーケストラと一緒に演奏するのは、超売れっ子でないと(笑)。こういうふうに作っていくといい音楽が出来るんだ……と、ファイナルまで全ての段階で学ぶことが多かったです」
2年前にライプツィヒでバッハ国際コンクールの覇者となった演奏家にしては、ずいぶん謙虚な発言にも思えるが「コンクールは色々な要素があるので」と至って冷静に状況を認識している。
「コンクールは何回受けても大好きにはなれませんが、他の参加者の演奏を聴ける良さがあります。小学生で初めてコンクールに参加したとき、『自分が好きなこと、やりたいことを音楽で表現していかなければ』と強く思ったことを覚えています。本当にその人の感受性や考え方が出ますからね。
普段のコンサートとコンクールで、演奏の仕方を変えることは……ないです(笑)。ある意味、聴かれ方が違うことは理解していますが、楽器を持って弾き始めれば自分自身の演奏をするしかない。幸運なことに海外の先生のレッスンを受けることが多かったので、自発的に音楽と関わることは10代の頃から心がけてきました」
2016.10.26(水)
文=小田島久恵
撮影=山元茂樹