世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第190回は、名前は知っていてもどんな国かは知らない人が多いあの国を、芹澤和美さんが訪ねます。
最大の都市アルマトイは
居心地のいい街
カザフスタンにウズベキスタンにトルクメニスタン……。いつか、国名に「スタン」と付くところを旅してみたいと、ずっと思っていた。日本と同じアジアだけれど、旧ソ連の名残もあって、シルクロードや遊牧民族の歴史を思い浮かべる中央アジアの国。その夢が、ようやく2018年の夏に実現した。
行き先は中央アジア最大の国、カザフスタン。2017年から、最長30日までビザが不要になった今こそ、行き時だ。この国最大の都市アルマトイと首都アスタナを1週間で巡る旅に出た。
ソウルからアルマトイまで、カザフスタンのフラッグ・キャリアであるエア・アスタナで約6時間半~7時間。帰路はアスタナからソウルまで同じく約6時間。中央アジアというと遠いイメージがあるけれど、意外と日本からアクセスしやすい。
今回は女性ふたり旅。道連れは、ソウルで翻訳家として活躍している旧友だ。お互い、出発前はドタバタで街の下調べをする余裕はなく、「予定は立てず、その日の気分で気ままに街を歩こう!」と開き直って、旅がスタートした。
アルマトイの空港で合流した後、ホテルのフロントでもらった地図を片手に、さっそく街歩きへ。
アルマトイは、1997年までこの国の首都だった大都会。天山山脈に見守られるなかに、緑豊かな街並みが広がっている。旧共産圏らしい巨大で無機質な建物があるかと思えば、ヨーロッパ風のかわいらしい建物が並ぶ通りもあって、風景はなかなか面白い。
歩くに連れ感じたのは、街が清潔なこと。道にゴミは落ちていないし、歩道も広くて歩きやすい。道行く人も、見間違えてしまうほど日本人とよく似たアジア系が多くて、なんだか和む。
ホテルや大き目のレストラン以外はほとんど英語が通じないし、店名もロシア語なのかカザフ語なのか、ちんぷんかんぷん。
でも、人に地図を指さして道を尋ねれば、なんとか頑張って答えてくれようとする。ちょっと愛想笑いをしてしまうところも日本人と感覚が似ていて、親近感が湧く。
旅先では、有名な観光スポットを巡らなくても、ぶらぶらと歩くだけで、心が満たされることがある。居心地のいいアルマトイは、まさにそんな場所。1日歩いて、すっかりこの街が気に入ってしまった。
2018.08.21(火)
文・撮影=芹澤和美