王権を象徴する模様、王族だけが着ることを許された色
19世紀
日本民藝館蔵
「紅型」の技法には、柿渋を塗り重ねて強度を高めた和紙を型紙として用い、それを彫って模様を染め出す型染、筒の先端から少しずつ米糊を押し出し、フリーハンドで文様を描く筒描きなど、木綿地の上に時に大胆、時に複雑緻密な形を描き出す方法がある。
また柄のデザインには、龍や鳳凰など中国の王権を象徴する模様や、枝垂桜や菖蒲、雪輪や雪持笹など日本の自然風物などが、当たり前のように登場する。
しかも本来の季節感や取り合わせのルールに囚われることなく、自由にアレンジしたハイブリッド模様として構成されているのが、大きな魅力のひとつ。
19世紀
静岡市立芹沢銈介美術館蔵 (展示終了)
一方色はといえば、琉球産の琉球藍や福木などの染料の他に、やはり中国からもたらされた染料や顔料を用いている。
明るい黄色を皇帝のまとう色とした中国の影響を受けたのか、王族だけが着ることを許された鮮やかな黄色系統(ドラマ中、国王の側室として登場する「真鶴」は黄色主体の紅型を着用している)、やはり貴重な染料だったシナ朱(カイガラムシ)を使った赤系統、水色や浅葱、藍色など青系統、さらにこれら多彩な色を組み合わせた染分地など、多彩な地染めが施され、琉球の激しい日射しに映えるコントラストの強い色彩表現が工夫された。
19世紀
松坂屋コレクション (展示終了)
しかしこの美しい紅型も、明治政府の廃藩置県によって尚王朝が崩壊したことで後ろ盾を失って衰え、さらに第二次世界大戦の戦禍によって、紅型の制作に関わる資料が失われたことで、衰退の一途をたどった。
19世紀
松坂屋コレクション
幸いなことに戦前、紅型の美に魅せられて蒐集や調査に努めた染織家の鎌倉芳太郎や芹沢銈介、民藝運動の創始者・柳宗悦、洋画家の岡田三郎助らのコレクションがあったおかげで、戦後の紅型復興が成し遂げられたと言われる。
沖縄復帰40周年を記念して企画された今展では、王家のみに許された特別な色と柄を施された貴重な作をはじめ、初公開となる松坂屋コレクションなど、これまでの紅型のイメージを大きく広げる、多様な作品が一堂に展示される。
※展示替えあり。
※画像の無断転載禁止。
サントリー美術館「沖縄復帰40周年記念 紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-」
会期 2012年6月13日(水)~2012年7月22日(日)
休館日 火曜日
開館時間 10:00~18:00 (金・土・7月15日は~20:00)
料金 一般1300円
問い合わせ 03-3479-8600
URL www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2012_03/index.html
Column
橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」
古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。
2012.07.07(土)