太刀魚照り焼きはムースのごとし
(13) フォアグラの茶碗蒸し 磯海苔あん
海苔の香りが顔を包む。茶碗蒸しはフォアグラを裏ごしして卵液と合わせた、なんとも色気のある茶碗蒸しである。これには、フランクシュタインの「Gewurz Gran Cru Roman」を合わせて。
(14) 太刀魚照り焼き
見事。まるでムースである。噛んだ途端に魚の身体が、甘い煙となって口に舞う。優美な甘みが、ふわりと広がって溶けていく。純米辛口「宝剣」が合う。
(15) 甑島のヤリイカ握り カボス
口の中に入れた瞬間に溶ける。
(16) カワハギときも 握り
中に肝をかまして握られている。
(17) 出水の大蛤握り 柚子とワサビ
なんともミルキーな甘みが広がる。
(18) アワビとカブ、ゴボウの有馬煮 ご飯
山椒の刺激。カブの辛味、アワビの旨み、ご飯の甘みという四味の、塩梅とバランスがピタリと決まっている。
(19) 自家製葛きり 黒蜜
鹿児島は葛がたくさん採れるのだという。これにマルコ・デ・バルトリのマルサラ酒「Vecchio Samperi」を合わせる。さすればくずきりがエレガントな色気を漂わす。
そして最後は、再び温かい知覧茶で締めくくられる。
予算は、酒のペアリングをつけて、約22,000円。夜の予約は一年先まで埋まっているが、それでも行きたい店である。
名山きみや
所在地 鹿児島市名山町4-10 三宝ビル2F
電話番号 099-295-0922
マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。
Column
マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。
2018.03.01(木)
文・撮影=マッキー牧元