【WOMAN】
主人公は80歳のおばあちゃん
恋に仕事に、出直し戦が開幕
長寿のお祝いのひとつに数えられる傘寿は、80歳を指す。
夫に先立たれ、息子夫婦と孫家族と4世代同居をしている傘寿の幸田まり子は、家の中に居場所がないことを痛感する。「終の棲処」を求めて家を出、不動産屋に足を運ぶものの、80歳の店子はどこも受け入れてくれない。辿り着いたのは、漫画喫茶。「気楽だけどさびしい さびしいけど気楽」。ベテラン作家で、文芸誌でエッセイ連載を持つまり子は、1畳あまりの新しい仕事場で原稿を書く……。
人は、毎日少しずつ、老いる。肉体的にも社会的にも、毎日少しずつ、弱者になる。だとしたら――「弱者の自分を 乗りこなせ」。世間が見つめろ考えろと突きつけてくる「残りの人生」という想像力をはねのけて、今の自分を生きろ! 時には立ち止まってしまいながらも、前を向き続けるまり子の東京サバイバル・ストーリーは、1巻ラストで急展開を果たす。何歳になったって、本気の恋はできるのだ。
『傘寿まり子』(既刊2巻) おざわゆき
太平洋戦争下の名古屋やシベリア抑留を生き抜いた日本人の物語を描いた作者が、がらっと作風を変え80歳のおばあちゃんをヒロインに。編集者、不動産屋、捨て猫、あこがれの人……。新しい出会いを重ねながら、人生の充実を得ようと格闘する姿を描く。『BE・LOVE』にて連載中。
講談社 580円
Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2017.05.02(火)
文=吉田大助