話題の東京ガーデンテラス紀尾井町にオープン!

 バブル時代の赤坂プリンスと言えば全女性の憧れ、連れていってもらいたいホテルNo.1であった。春にはその年のクリスマスの予約争奪戦が勃発し、秋が訪れる頃にはホテルもレストランもすべて埋まっていたっけ。

 閉鎖されると知った時にはひとつの時代が終わったと本気で落ち込んだな。その赤プリが東京ガーデンテラス紀尾井町として生まれ変わったのだ!

 素敵なお店があるなか第六感でここ! と決めたのが「ザ・シノワ テイスト オブ カントン」。

メインダイニング。ここに通されて気分がアガらない女性はいないはず。光と影、色彩の演出に心が躍る。

 お店に入ってからテンションがアガるアガる。落ち着きのある色彩、女性を美しく見せる照明の魔力、ゆったりと配置されたテーブル。

 そして眼の前に広がる赤坂の夜景、これよ、これなのよ、ちょっぴり日常とは違う空間でキラキラする感じ。ワンピース着て久々にヒールを履いてきた甲斐があったわ~。

3つある個室のうち2つはメインダイニングを通らない。エントランスに一番近いこの部屋はお忍びやお子様連れにも。

 食前酒はもちろんシャンパンをグラスで。メニューはコースとアラカルトがある。スペシャリテは干し鮑ですって。鮑のページを見てみると、え? 「大間産3頭干し鮑(網鮑) 888,888円」って何? 80万円ってこと? 一番安い吉浜産30頭でも14,000円。

 無理ムリむり、絶対無理! そもそも鮑は高級食材だけど、それにしたってこれはきっと何か特別なものに違いない。メニューの話にかこつけて鮑について訊ねてみると……。

 まずは産地。世界三大鮑は「網鮑(モンパオ)」、「吉品鮑(ガッパンパオ)」、「禾麻(ワォーマ)」で、鮑の味密度と乾燥作業に適した自然環境を兼ね揃えた、青森県大間と岩手県吉浜が最高とされている。大間では三大鮑すべてが獲れるが、吉浜では吉品鮑しか獲れない。

 でもここで採れたものはすべて海外に輸出されてしまうので、逆輸入しなければならない。だから高価になってしまうというわけ。

 特に生産量が少なくひとつずつ両面を天日干しにする「網鮑」は超高級品なのだそう。

 次に大きさ。

 干し鮑の単位は「頭」。一斤(600グラム)で何個になるかなので、数が大きくなれば鮑は小さくなるそう。

 3頭だと干した状態で200グラムほど。それを時間をかけて丁寧に戻すと340グラムくらいになる。

 10頭でもかない大きいほうで、巷でよく食べられるのは30頭くらい。よって、3頭なんて大きさはかなりレアってわけ。確かに7日前に予約って書いてある。

これが3頭の大間産「網鮑」。この大きさになるには20年近くかかるので、もう生息はしていないと言われている。乾燥した状態で10cmほどの大きさで厚みがあればあるほど価値が高い。こちらでは芳醇な香りになる2年以上のものしか扱わない。

 こちらでは大きさを考慮して大間の「網鮑」と吉浜の「吉品鮑」を仕入れているので、もはや高くても仕方がないってこと。でも国内外の一流レストランで腕を振るってきた簗田圭シェフが独自のルートで買い付けているから、このクオリティと大きさがこのプライスで提供できているそう。

 つまりかなりリーズナブルなのである。と言われてもお財布には痛すぎるし、でもここで鮑を食べなければ絶対後悔する。ということで鮑が入っているコースをいただくことに。

2016.09.26(月)
文・撮影=高橋綾子