新コンセプトは、中華とフレンチの融合
いまでこそ、クロスのかかったテーブルでワイングラスを傾けながら食べる、オシャレな中華料理店はいくらでもあるけれど、昔は中華でデートなんて考えられませんでした。ちょっとこぎれいな、大きな中華料理店は、親戚の集まりでしか使わなかったし、円卓こそ中華を象徴するものだと信じていました。
80年代にオープンした、このダイニズテーブルは、そんな中華料理のイメージをがらりと変えた、歴史的な店です。バブル前から、夜ごと、時代の先端をいく人々が集まり、さらにすごいのは、オープンから30年以上、ずっと人々を惹きつけ続けてきたこと。
そして2015年、従来のスタイルにあぐらをかくことなく、大胆なリニューアルまで果たしたのです。新コンセプトは、中華とフレンチの融合。
ダイニズテーブルの考える、中華とフレンチの融合は、かなり「本気」です。単に、ワインリストを充実させただけ、なんていうことではありません。
厨房には、中国人の中華の料理人と、しっかりフレンチを修業してきた料理人が。一つの料理の中に、中華の要素、フレンチの要素を入れ込むわけですが、決して創作料理にはなるまいと、試行錯誤を繰り返している様子。どうしたら二つの偉大な料理の本質を組み込ませることができるだろうと、二人が時間をかけ、一皿一皿、完成させているのです。
こうして一年が経ち、ダイニズテーブルらしい新しい料理がいくつも完成しました。
ちょっと前置きが長くなりましたが、コース(8,000円)の中から、特にこれはと思った料理を中心に紹介したいと思います。
A菜の上にフォアグラが!
右:上湯のジュレをかけたズワイ蟹と枝豆のムース。
訪れた時期に旬だったソラマメを使った突き出し、上湯のジュレをかけたズワイ蟹と枝豆のムースのあとに登場したのが、「焼きA菜 紹興酒風味のフォアグラテリーヌ添え」です。焼いて、旨みを凝縮したA菜(中華独自の青菜で、こちらでつかっているのは台湾産)の上に、フォアグラのテリーヌが。
しかもこのテリーヌが紹興酒風味なのです。この香りとほんのりした甘さが、意外なことに緑の濃い野菜に合って、ソースのように口の中で絡みます。フレンチでフォアグラのテリーヌといえば、リンゴの煮たのだとか、貴腐ワイン、ブリオッシュなど、甘いものと合わせるのが定番ですが、こんな風に中華と融合できるのだなあと納得。
なんといっても、主役がA菜なのがいい。
続いては「冬瓜のすりおろしとコンソメのスープ」。荒くすりおろした冬瓜が口の中でとろけ、ていねいにとったコンソメスープとの相性もよく、すっとおなかにおさまります。
2016.07.18(月)
文・撮影=浅妻千映子