LOVE:よだれ牛
ごはんが進むソースもうまい!
銀座|銀座 やまの辺
この仕事をしていると「あそこにできたお店おいしいよ~」という情報をたくさんいただけてありがたい。だが、この秋はなんだかとてつもなく忙しく、「落ち着いたら行こう……、いつか食べよう……」と溜息混じりにとりあえずメモメモ。そして多忙に身を任せて暮らす毎日だった。
しかし、その日得た情報は違っていた。「北條さんの行くべき店よ!」とまさかの名指し。聞けば「コースのみの中華なんだけど、途中でも釜炊きごはんを出してもらえる」のだという。確かにそれは私向き。いつもコースを食べながら、「ごはんが食べたいなぁ。でも言い出せない」とうじうじしている様子を横で見ている方からの的確な情報である。
というわけで、久しぶりに張り切って予約をして、いざ出陣。余談になるが、場所はかの「日本橋 よし町」があったところである。ああ、「よし町」のワンタンメンがもう食べられないなんて……と涙しながら懐かしい階段を降りる。
予約したテーブルには化粧皿が置かれている。こんなきちんとしたしつらえで、ごはん頼めるの!? と、ドキドキしながら、ともかく身を任せることに。
スタートはヒゲダラの昆布〆だった。以前、「日本一の魚屋」の本を作ったときに何度も聞いた「ヒゲダラはもっと評価されるべき!」という言葉を思い出す逸品だ。青山椒を効かせたねぎ油で、ヒゲダラの力強い旨みがいよいよのってくる。
お次はサラダだ。湯引きした牡蠣と細切りの薬味野菜を合わせている。揚げたワンタンの皮(推定)もトッピングされていて、シャキシャキ、パリパリ、そしてプリプリ。さっぱりとしたサラダ……なだけでない、質のいい牡蠣のパンチが響く。まるまるとして味の濃い、素晴らしい牡蠣であった。
そして! いよいよ釜が開きましたよ! トンポウロウがミニ丼で登場~。沖縄の豚肉を使っているらしく、うれしい皮付きである。こっくりと煮上がった、てりってりの角煮がごはんの上に鎮座している。とろけるような味わいで、中盤のごはん欲を満たしてくれる。「ごはんください」と言わずに済んで、ありがたい。〆ではなくこのタイミングでの丼、ごはん好きへの隠れたメッセージを感じる。
ここでスープの登場だ。もはや和食のリズムである。具は白子とフカヒレ! 特に驚かされたのはフカヒレ。とにかく分厚いのだ。巨大ではないが、厚い。フカヒレのスープというと安く出しているお店なら繊維がほろほろと入っている感じだが、ここでは皮をむいたグレープフルーツのひと房のようにゴロリとしている。もちろん歯応えもあり、味もある。
そんなフカヒレと白子だもの、ただでさえおいしい上湯(シャンタン)がますますコクを漂わせ、深く深~くおいしい。「へべす」という香りのいい宮崎産の柑橘が添えられていて、途中でちょっと搾るとまた表情を変える。もはや松茸の土瓶蒸しの世界ですね。
2015.11.30(月)
文・撮影=北條芽以