最優秀主演男優賞受賞を経て、海外も視野に
――現場での印象的なエピソードを教えてください。
印象的だったのは、不貞を働いた妻のたまきを夢二が呼び出して乱暴するシーンがあるんですが、台本上では夢二はたまきに甘えていたんです。そこに関して、僕はまったく腑に落ちなかったんです。男の心理としては、征服力で無茶苦茶にするだろうということを監督と話し合って、あのシーンが出来上がったんです。
――このシーン以外にも、激しいラブシーンがありましたが、いかがでしたか?
これまで、そういう恋愛沙汰に巻き込まれない、ラブシーンとは無縁な役ばかりだったと思うんですが(笑)、僕としてはあまり意識しなかったですね。大変なのは女優さんの方だと思いますよ。ただ、見せて恥ずかしくない程度に、ちょっと体を鍛えました(笑)。
――昨年9月に開催された「Japan Film Festival LA 2015」では、最優秀作品賞(グランプリ)とともに、最優秀主演男優賞を受賞しましたが、いかがでしたか?
まさか自分が賞をいただけるとは思っていなかったので、素直に嬉しかったですね。自分の家族も連れて行っていたので、子供に対して、少しはいい背中を見せることができた気がしますね。初主演映画は一生で一度しかないわけですし、もちろんこの現場で経験させてもらったことは、かなり自分の糧になったと思います。
――今後の目標、または目標とする先輩などがいれば教えてください。
日本でも仕事を続けていくなかで、海外の作品に出て、勝負できる役者になるというのは今後の目標のひとつです。それが何年後、何十年後になるか分かりませんけれど。
駿河太郎(するが・たろう)
1978年6月5日生まれ。兵庫県出身。2003年より音楽活動を開始し、08年より俳優へ転向。11年にNHK連続テレビ小説「カーネーション」ヒロインの夫・勝役に抜擢されるほか、ドラマ「半沢直樹」「ラヴソング」などに出演。「Japan Film Festival LA 2015」で最優秀主演男優賞を受賞した本作のほか、出演待機作に『真田十勇士』(2016年9月22日公開)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年10月29日公開)他。また、同時公開の舞台版『真田十勇士』(2016年9月11日~)、初挑戦となる歌舞伎『廓噺山名屋浦里』(2016年8月9日~)などがある。
『夢二~愛のとばしり』
「美人画」のモデルとなった妻・たまき(黒谷友香)と息子の3人で絵画の店を営みながら暮らす夢二(駿河太郎)は、芸術家として平凡な日常に不満を抱き、筆の進まない日々を送っていた。男性としての色気を放ち、女性ファンが絶えない彼は彦乃(小宮有紗)と出会う。
(C)2015 映画「夢二~愛のとばしり」製作委員会
2016年7月30日(土)よりシネ・リーブル池袋、シネ・ヌーヴォなど全国順次公開。
http://yumeji-ai.jp/
くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2016.07.29(金)
文=くれい響
撮影=橋本 篤