悲喜劇に仕上がった新作映画『ヒメアノ~ル』

――自身で「喜劇役者」を名乗っているムロツヨシさんですが、自分がブレイクしたと思った瞬間はありましたか?

 作品でいえば、「勇者ヨシヒコ」シリーズですかね。じつは最初の「勇者ヨシヒコと魔王の城」の放送前に全話の撮影が終わっていたんで、放送後の反響には驚きましたから。それで世間がなんとなく知ってくれるようになり、次は連続テレビ小説「ごちそうさん」と「LIFE!~人生に捧げるコント~」ですね。誰も「喜劇役者」とは言ってなかったのですが、ある日、覚悟を決めて言ったんです。「なぜ役者をやっているか?」というと、僕は人の笑い声が聞きたいから。自分から名乗ることはプレッシャーでもあるんですが、それをどこかで超えたいとも思ってたりします。ちなみに、“喜んで劇をする役者”ですから、という逃げも用意していますが(笑)。

――最新出演映画『ヒメアノ~ル』では清掃会社に勤める安藤を演じられましたが、どのような現場でしたか?

 今回初めて組んだ吉田恵輔監督は、威厳のある監督かとイメージしていたら、これが全然威厳がなくて(笑)。冗談で(共演の)濱田岳と「あいつに任せて大丈夫なのか?」と言っていたぐらいです。でも、出来上がった作品を観たときは衝撃的でした。自分の芝居云々じゃなくて、なんていい作品なんだろうと! 二面性がありながらも、ひとつの世界を描いている。面白くもあり、悲しくもある悲喜劇になったと思います。

2016.06.10(金)
文=くれい響
撮影=佐藤 亘