クレジット軽視の風潮に異議を唱えたい!

伊藤 できればクレジットは少なくしたいっていう風潮はありますよね。コーライティングで楽曲を作ると作曲のクレジットに3人とか4人の名前が連なるんですよね。それを嫌がってチーム名にしてくれって平気で言うディレクターがいる。こっちは“この名前でやっている”わけですよ。それを平気で名前変えろって、どの口が言ってるんだ! って思いますよね。モーツァルトの権利団体に対して「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」は長いんでミドルネームだけでいいっすか、って言うのか!! って(笑)。クリエイターに対するリスペクトが無さすぎる。

山口 この件は激怒して、ブログを書いたので、興味のある方は読んでみてください(「ミュージシャン・クレジットは、クリエイター・リスペクトへの第一歩だ!」〈外部サイト〉)。日本の音楽業界には問題点もたくさんありますが、ミュージシャンに対して敬意を持つという文化があるのは、素晴らしいところだと思っています。若いA&Rに伝わってないとしたらレコード会社の幹部からしっかり指導していただきたいです。作家名の変更を要求したり、ミュージシャン・クレジットを面倒がるA&Rがいるなんてことを知ったら激怒する業界重鎮の顔が沢山浮かびますよ、ミュージシャンをリスペクトすることは音楽文化の基礎です。そういう意味でも、福山雅治の存在と貢献は大きいですね。

伊藤 まぁ吠えてばかりいても世の中は変わらないので、一発でリスペクトされる曲を作ることも大切。

山口 その通りですね。ただ、サラリーマンA&Rに、そういう仕事の仕方でいると上司からの評価が下がるということは教えてあげたいです(笑)。「ボーナス査定のためにも作詞家、作曲家、ミュージシャンのクレジットは丁寧にやった方がいいですよ」と。

 さて、この「Soup」からフードミュージック・プロデューサーはどんな妄想が浮かびましたか?

伊藤 僕らは朝5時に目が覚め、庭を歩く。庭といってもただの山、そこを歩きながら朝の空気を吸い、自然と馴れ合う。伸びすぎたツルや草を抜き、棘の生えたヤツを刈る。一年草に教えてやる、お前の場所はここじゃないと。森に生ける生き物として、いちばん異臭を放っている人間、そんな自分の生き場所を確保する。そしてツルも草も棘も土に返す。

 7時にキッチンに立ち、食糧庫と冷蔵庫を眺め、そして相談する。自分の体に必要なものとスタイル、そして欲しいもの。Soup、悪くない。いや、むしろカッコイイ。ツルも草も棘、あとちょっとした根菜と出汁になる要素と、あとは思いやり、「おはよう」がおいしい!

山口 長野滞在中の伊藤さんの生活が目に浮かびます。

藤原さくら「Soup」
スピードスターレコーズ/ビクターエンタテインメント 2016年6月8日発売
初回限定盤[CD+DVD]1,800円、通常盤[CD]1,200円(税抜)
■藤原さくらは福岡県出身の20歳。父の影響で、10歳の時に初めてギターを手にする。2014年3月、高校卒業と上京を機に、インディーズデビュー。翌年3月にはメジャーデビューを果たす。ファーストシングルとなる本作の表題曲は、自らがヒロインを務めるフジテレビ系ドラマ「ラヴソング」の主題歌。
■「Soup」作詞・作曲/福山雅治 編曲/福山雅治、井上鑑
■オフィシャルサイトURL http://www.fujiwarasakura.com/

【動画サイト】
「Soup」

URL https://www.youtube.com/watch?v=cd-qx2lF9Hg

2016.05.30(月)
文=山口哲一、伊藤涼