【次に流行るさらにもう一曲】
廣野ノブユキ「Rainy」
知られざる「nana」発のヒット曲とは?
山口 昨年最もnanaで歌われた「Rainy」という曲は、廣野ノブユキという25歳の銀行員シンガーソングライターの楽曲なんです。60万回再生というも凄いのですが、それ以上に注目すべきは3000超の様々なバージョンがアップされていることです。いろんなユーザーに歌われ、演奏されて広まっているんです。ニコ動に例えると、ボカロPのポジションのクリエイターがnanaにも出てきたということですね。第一興商が興味を持って、DAMでカラオケ配信されることになりました。オリジナルバージョンのiTunesなどでの配信も始まりました。僕も積極的に関わって、新しいムーブメントにしていければと思っています。
伊藤 3000バージョンがアップされているってヤバいですよね。その「Rainy」ですが、聴かせてもらったけど普通にカッコイイ。音楽的だしファンキーだしカッコイイ、だけどなぜこれが中高生に刺さり、カバーしたいと思わせるか? 萌えもキュンもカワイイもないし、エレクトロでもないしダンスもなく目立ったNEWがあるわけじゃない、なのに……。逆にファッション要素がそぎ落とされた、シンプルに音楽的であるところが魅力なのかもしれない。
山口 僕は80年代後半に日本で「シティポップ」って言われていたジャンルの楽曲に聞こえました。本人に訊くと、大学時代にジャズギターをやっていたり、ご両親が音楽好きだったりするので、そういう影響のようです。そして、何故この曲がnanaユーザーにウケたのかは、全然わからないです(笑)。
伊藤 過去のどのブームも知らない世代には見えているカッコ良さがあるんでしょうね。“ゆとり”ですらドラマのテーマになってしまえば、彼らはこれからの新人類ではなく、もう過去の世代になった。次の世代が作るもの、nanaにはそれがあるのかも。
山口 nanaは新しい音楽の震源地になりますね。というか、もうなっています、僕ら大人が知らないだけですね(笑)。
伊藤 その通り。「Rainy」はそのプライオリティです!
山口 今回の「来月流行るJポップ」は3曲を推しです!
廣野ノブユキ「Rainy」
2016年5月24日iTunes Music Store他の各サイトにて配信開始
2016年5月31日全国の第一興商DAMにてカラオケ配信開始
■CD未発売、デジタル未配信にもかかわらず異例の人気を得た楽曲が、満を持してフルバージョンで配信をスタート。7月には「Rainy」だけを収録したコンピレーションCD『Fes. of Rainy』も発売される。その参加シンガー、ミュージシャンはnanaおよびSHOWROOMで公募される。
■「Rainy」作詞・作曲/廣野ノブユキ
■オフィシャルサイトURL http://www.hirononobuyuki.com/
Column
来月、流行るJポップ チャート不毛時代のヒット曲羅針盤
音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
2016.05.30(月)
文=山口哲一、伊藤涼