「突然膵臓がんと診断され、そのとき既にステージは4bだった」今は亡き作家による“最後の日記”
山本文緒さんが亡くなって1年余りが経つ。家族とごく親しい人たち以外には伝えられていなかったという病については私ももちろん知らず、突然の訃報にただ呆然とした。「2021年4月、私は突然膵臓がんと診断され、そのとき既にステージは4bだった」文緒さん最後の日記の最初の一行である。治療法はなく、抗がん剤で進行を遅らせることしかできない。けれども、その抗がん剤は「地獄」のように辛く、一度受けたきりで緩和ケアへ進むことを決めた。さらりと告げられた事実に読者の足はすくみ、しかしすぐにそこから続く最後の日々に深く引き込まれていく。