昭和時代に建てられた中古住宅を購入し、身の回りを昭和で埋め尽くす暮らしをしている平山雄さん。『昭和ぐらしで令和を生きる』の著書もある平山さんに、「輝かしい」時代であった当時のアイテムが溢れるご自宅にて「昭和ぐらし」の魅力を伺いました。
意図していない和洋折衷のトリコに
――昭和を愛するあまり、昭和時代に建てられた一軒家を購入したそうですね。「昭和」へのこだわりはいつからですか?
平山さん 物心着いた時から新しいものには一切興味がなかったですねぇ。若い頃は海外のものに興味を持ったこともありましたが、それも古いものばかりで。自分が実際に体験したものや、馴染みのあるものを使う方がしっくりきます。僕が昭和43年生まれなので、当時の原風景がそこにあるといいますか。昭和の時代からずっと昭和が好きなんです。
――昭和の暮らしを再現したこの一軒家は圧巻ですね。
平山さん 昭和中期(1960~1970年代)の暮らしをリアルに体感したくて、昭和47年(1973年)に建てられたこの家を探して購入しました。2005年に購入したので、ここで暮らし始めて約20年になります。家具、家電、食器にいたるまですべて当時のものを集めて実際に使っているのが最大のこだわり。家で聴く音楽や読む本もすべて当時のもの。家にある新しいものといえば、仕事で使わざるをえないパソコンやスマホくらいでしょうか。あとは猫のトイレグッズくらい?(笑)。おもちゃもその当時に流行ったものですよ。かわいいですよね。
僕が特に好きな昭和中期のものは、海外のデザインに憧れてそれらの真似はしつつも、うまく真似しきれなくて日本のテイストが入り込んでいるのが愛すべき特徴。あか抜けきれていない、絶妙なバランスに惹かれます。意図していない和洋折衷といったらいいのかな。日本人本来のセンスのようなものが隠せてないところがいいですよね。
また、経済が上り調子で勢いに乗っている時代だったからか、色合いやデザインがアッパーなものが多いんです。カラフルでそれぞれのアイテムに元気があって力を感じさせますよね。今の時代にはまず生まれてこないデザインだよな、と見ていて惚れ惚れします。若い子を中心に昭和レトロなアイテムが注目を集めているのは、「パワーや元気をもらえるから」という理由もあるのかもしれませんね。今のデザインは良くも悪くも洗練されすぎていますから。
家中を昭和のもので埋め尽くしているので、「昭和コレクター」と言われることもあるんですが、自分のことを「コレクター」だと自称したことはありません。昭和に作られたものだからといって生活で使わないものは購入しません。家を倉庫みたいにはしたくないし、あくまでも僕が憧れる昭和には普通に存在していた当時の暮らしの雰囲気を再現したいんです。だから持っているものをさらに買い集めるようなこともしないようにしています。
2024.10.09(水)
文=高田真莉絵
写真=佐藤 亘