小泉今日子さんと言えば、80年代を代表するアイドルであり、舞台や映画、ドラマ出演もこなす女優。そして、今では株式会社明後日の代表取締役を務めながらプロデューサーといった仕事にも取り組まれています。そんな小泉さんは、大の読書家としても知られています。
書籍『ホントのコイズミさん』は、Spotifyで“本をテーマ”にスタートしたオリジナル番組『ホントのコイズミさん』として放送されていたものから、テーマに合わせた放送回をキュレートして集めたもので、3冊目となる本のテーマは【NARRATIVE】。小泉さんの今の本音をたっぷりと伺いました。
私にとっての日常でも、誰かの特別な日かもしれない
――小泉さんの女性ファンのお話を引き続きお伺いしますが、同世代の女性たちが「ずっとキョンキョンを追っかけている!」という話をよく耳にします。アイドル時代から憧れの女性像として、小泉さんは突出した存在でした。
ありがたいですね。あの頃は男性アイドルもたくさんいて、その人たちの追っかけと言われる女性たちが、テレビ局の前などで出待ちしていたところに遭遇していました。でも、その男性アイドルの方が忙しくておしゃべりする時間がなかったり、ちょっとご機嫌斜めですぐに車に乗って帰っちゃったりするタイミングで、私がテレビ局を出ていくと、よく「今日子ちゃん、これあげる」と、その女性たちがお菓子をくださったりするんです。
「どうして?」と聞いたら、「○○くんが受け取ってくれなかったから、今日は今日子ちゃんにあげる」って。私も「ありがとう」と、こんな感じでよく会話していましたね。話しやすかったんじゃないかな(笑)。
――ファンサービスについて、別のインタビューで、「おしゃべりもサインも、しちゃったほうがいい」と小泉さんはおっしゃっていて。
はい。私にとってファンの方のおしゃべりやサインなどは日常的なことですし、煩わしいと感じる日もたまにはあるかもしれないけれど、その人たちにとっては人生のたった1回きりのチャンスかもしれないじゃないですか。そう思ったら、やはり無碍には断れないと思うんです。
私と話すことで、何日間かでもその人が元気になるのだったら「私も、生きている意味がある」と思うというか。若いときは全部断っていたことありますよ。でも、映画でご一緒させていただいた真田広之先輩がすごく丁寧に対応されているのを目撃して反省したんですよね。
今は、昔のパンフレットを山のように持ってきてサインが欲しいと出待ちしている人がいたりすると、「メルカリで売るんじゃないでしょうね? 顔を覚えておくよ!」ってくぎを刺したりしますが(笑)。
――面白いですね(笑)。CREAの読者は30代ですが、彼女たちにとってもロールモデルとなる素敵な先輩だと思います。
ありがとうございます。でも、ロールモデルにはいろんなタイプがいないといけないと思うんです。これから先はシニアの時代になっていくわけだから、若い人たちが年齢を重ねることに少しでも希望が持てるように。
その一人として、「小泉今日子的な生き方も、アリかも」という感じを目指したいです。
2024.03.13(水)
文=前田美保
撮影=深野未季
スタイリスト=藤谷のりこ
ヘアメイク=石田あゆみ