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 2024年2月3日土曜日、大阪の「梅田 蔦屋書店」の控室。『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』刊行記念のトークイベント開催の直前である。

 本の著者は内田也哉子さん。言わずもがな、内田裕也さん、樹木希林さんがご両親。この本は、二人をたて続けに亡くされた空虚感が執筆のスタートだったという。

 トークイベントが始まるまでの15分間、インタビューをすることになった私は、少し身構えていた。一筋縄も二筋縄もいかない芸術肌の家族に囲まれながら、あの穏やかさをキープできる胆力を持つ彼女こそ、実は一番ロックンロールで手強い、と勝手に想像していたからである。

 お会いしたことがないうちから失礼だが、謎のハードルを感じる。私の人間性をすぐ見透かされそう。クァーッ!

 ところが、内田也哉子さんが

「こんにちは~ありがとうございます」

 とストールを整えながら控室にニコニコ入ってきたとたん、その思い込みは砕け散った。

内田也哉子さんの第一印象は、“丸腰感”

 いやもうビックリした。ま、丸腰……。なんというか丸腰感がすごい! 穏やかとか自然体とかとは違う、ナチュラル・ボーン・ウエルカム(意味をなんとなくわかっていただけるだろうか)的なやわらかい雰囲気に、身構えていた心は速攻で消えた。それどころか、

「大阪へようこそーッ」

 と満面の笑顔で叫んでしまった自分がいた。今思えば痛い浮かれようであるが、也哉子さんは私の変なテンションに動じることなくニコニコ。取材は流れるようにスムーズに始まったのである。

 まずは、トークイベントで来るのは初めてという大阪の印象を聞く。

「新幹線から一歩降り立った瞬間、血が騒ぐというか、アップリフティングという感じで。書店をいくつか回って、店員さんと話したり、運転手さんとタクシーで話したり、当たり前ですがみんな関西弁で。人柄が東京と全然違って、思いがけない話題にも花が咲き、広がるんですね、それがすごく楽しくて」

 内田裕也さんが兵庫県、西宮の出身。小さなころ訪れた記憶もほんの少し残り、縁を感じているという。 よかった……。改めて、大阪へようこそ!

2024.02.15(木)
文=田中 稲
撮影=佐藤 亘(ポートレート、書籍)、編集部(イベント風景)
ヘアメイク=渡邉ひかる(ambient)