今月のテーマ「仕事人」
【MAN】
決闘の代理人をする幽霊と
幽霊に憑かれた女の仕事
19世紀英国の王立劇場に現れる幽霊“グレイ”は、死してなお「決闘代理人」をなりわいとしている。対価は、依頼人の命だ。ある日、凶悪な生霊を背負った少女が、彼の目の前に現れる。「私を取り殺してください」。彼女の名は、フロレンス・ナイチンゲール。後世の誰もが知る、あの白衣の天使だ。
序盤は少年漫画らしいスタンド(=代理人)バトルで、グレイの「仕事」がフィーチャーされている。お前の絶望が最高潮に達したところで殺す、ならばぬるい絶望は俺様が取り除く! ばったばったとナイチンゲールの人生を邪魔する人間(の生霊)をぶった斬る。その結果、障害が取り除かれ、彼女の理想とする看護の道が開けることになる。傾いた病院の経営を立て直した次は、クリミア戦争のまっただ中へ。どんな絶望もはね除けるヒロインの仕事っぷりに、「行け行け!」と拳を振り上げたくなる。そして……カーテンコールのひと仕事がとびっきり熱い!!
『黒博物館ゴースト アンド レディ 上』(既刊上下巻) 藤田和日郎
『うしおととら』『からくりサーカス』の漫画家が描き出す、19世紀英国の伝奇アクションシリーズ第2弾。黒博物館に展示されているのは、幽霊が劇場の座席に残したとされる「〈灰色の服の男〉のかち合い弾」。その弾丸の生まれた物語が、今初めて語り明かされる……。
講談社 880円
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2015.11.04(水)
文=吉田大助