今月のテーマ「旅のお供は」
【MAN】
バトルロワイヤルのかたわらで美味しいアイヌ料理に舌鼓
日露戦争終結直後、北海道へ一攫千金を夢見てやってきた元兵士、人呼んで「不死身の杉元」。さまざまな因果が繫がって、莫大な埋蔵金を巡るバトルロワイヤルに参戦することになる。ライバルは北の最強軍隊・第七師団、実は生きていた新撰組副長・土方歳三、ヒグマ200体撃破の伝説のマタギ……。
旅のパートナーは、雪山で偶然出会ったアイヌの美少女アシリパだ。埋蔵金はもともと、アシリパの父が集めていたものだった。杉元にとってはカネのため、アシリパにとっては復讐のため。「ふたりで手を組めば鬼に金棒だ」。実は彼女は、名コックでもある。腹が減っては戦はできぬ。仕留めた動物達をさっとさばいて調理する、アイヌ料理の美味しさと豪快さが、険しい旅を楽しく色付けるのだ。どこか“天然”のアシリパの言動は、笑いも招き寄せてくる。ほんのりと、恋愛の匂いも。
少女の存在で、王道のバトルロワイヤル漫画は、一回りも二回りも大きくなった。ぶんどれ埋蔵金!
『ゴールデンカムイ』(既刊1~3巻) 野田サトル
埋蔵金のありかは、脱獄した死刑囚たちの背中の入れ墨を、全員分集めれば分かる――。残酷描写もいとわないハードなストーリーのかたわらで、シズル感たっぷりに描かれる料理場面とのギャップが魅力的。動物の骨や胃袋などを利用して道具を作る、DIYの楽しさもアリ。
集英社 各514円
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2015.09.03(木)
文=吉田大助