【WOMAN】
現代最高の時代劇漫画家が描く
人と仕事を繫ぐ、必殺仕事人
モヒカン頭がトレードマーク(今は坊主)の女性マンガ家・岡田屋鉄蔵が描くのは、イイ男。最新の時代劇シリーズは、江戸で職業斡旋をなりわいとする「口入屋」の物語だ。
第1巻では、女郎に身を堕とそうとしていたお絹を拾う。暴力亭主と離縁するための条件が、百両なのだと言う。身元調査により、お絹に商売の才があると見抜いた兇次が斡旋した仕事は、落ちぶれた女郎宿の立て直し。そこから描き出されるのは、旧態依然の構造を改革&イノベーションする快感だ。ビジネス漫画としても抜群の説得力がある……と思いきや、たちまち愛の物語へと変貌する。そして、絶望の物語へと。
兇次と仲間たちの裏の顔は、いわゆる「必殺仕事人」。大事な顧客に手を出した落とし前は、きっちり付ける。本気になったイイ男は、最高に怖い男。素晴らしいドラマ密度、素晴らしい筆捌き(状況を反映してコロコロ変わるお絹の顔!)。岡田屋鉄蔵の「仕事」はもはや、達人の域だ。
『口入屋兇次』(既刊1巻) 岡田屋鉄蔵
夜鷹に身を堕とそうとしていたお絹を、遊び人の三筋が拾い、口入屋兇次の元へと連れていく。「アンタがこの世界入ったら三日で壊れる」。二葉の身元調査の結果を受け、お絹にうってつけの案件を斡旋することに。表の「仕事」が、ラストでぐるっと裏返り「仕事人」に!
集英社 600円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2015.11.04(水)
文=吉田大助