各線の三宮駅を背にして、北野坂をゆっくり歩いて上がります。駅の近くはカラオケ店や夜の飲食店が多くて雑然とした感じですが、坂道を上るほどに落ち着いた雰囲気に。そう、異人館街で有名な北野町です。
北野坂のランドマーク的な存在といえば、蔦がからまる煉瓦造りの建物で、阪神・淡路大震災前は会員制だった「北野坂にしむら珈琲店」。その東向かいの並びには、「インドクラブ神戸」や「ダルビッシュ記念館」も。ギャラリーやブティックが入ったコンクリート打ち放しのビルの前の小さな看板を目印に、階段を下りて、くるりと回り込んだ奥にあるのが「CAKE STAND」。最近見つけた、お菓子好きの隠れ家です。
右:コンクリート打ち放しの雰囲気がとてもお洒落。
オープンは、2015年8月28日。6坪半のスペースに、テーブル6席、カウンター4席。小さいけれど、テーブルは大きくてゆったり。カウンターの椅子や照明まで選び抜かれていて、シンプルでお洒落です。オーナーでパティシエールの寄砂愛麗(よりすな あいり)さんが作った焼き菓子やクッキーがさりげなくカウンターに並んでいます。
「レストランで出されるデザートプレートがとても好き。でもそれだけを注文することは、ほとんどできません。自分のお店でデザートプレートを出したいなと思って」と寄砂さん。
小さなお店には、業務用の大きなオーブンやミキサーは置かれていません。寄砂さんが、毎日少しずつ、ていねいにすべてを手作りしているのです。
寄砂さんは、高校生の頃から、フランスとお菓子に興味があったのだそう。短大卒業後にアルバイトをしてお金を貯め、フランスのル・コルドン・ブルー パリ校でお菓子作りを学びました。現地のお店での研修も経験。帰国してからは、神戸のカフェで働きます。
「パティシエもホールのサービスも経験しました。そのカフェはウエディングもやっていて、一生に一度の記憶に残る仕事もいいなと思ったんです」。プランナー希望でブライダルの会社に入ったのですが、パティシエとして働くことに。ウエディングのケーキやパーティのデザートを長年担当しました。
「見た目が重視されるウエディングのケーキやデザート。そうではなくて、見た目は地味だけれど、旬の果物を使った、今食べておいしいお菓子を出したい」と、にっこり。
2015.10.25(日)
文・撮影=そおだよおこ