ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!
ロールスロイスの送迎は優美な音楽を聴きながら
シドニーからの移動は、ファーストクラスのフライトがなかったので、カンタス航空のビジネスクラスで香港へ。
香港国際空港では、あらかじめホテルに送迎のロールスロイスをお願いしてあった。でも、送迎サービスは車だけではなかった。飛行機の降機口に私の名前を書いたプレートを持った女性が待っていた。
彼女は手荷物を持ってくれ、ラゲージクレームでは私の大きなスーツケースをカートにピックアップしてくれて到着ロビーへ。そこでホテル側の送迎スタッフにバトンタッチ。ロールスロイスへと送り届けてくれた。
そんな素敵なVIP仕様の送迎サービス(有料)を用意しているのは、「東洋の貴婦人」と称される、1928年開業の老舗ラグジュアリーホテル、「ザ・ペニンシュラ香港」。ずっと泊まりたいと思っていたホテルだった。
大学を卒業後、まだこのような仕事をする前、女友達と香港に遊びに行った。格安ツアーを使っての節約旅だった。私が「ペニンシュラでアフタヌーンティーをしようよ」と提案すると、友人は「高すぎる!」と拒否。旅行初心者だった私は、ひとりで海外の高級ホテルに向かうことができなかった。それ以降、香港に旅する機会はあったが、なかなか立ち寄ることができなかったのだ。
ロールスロイスの中で、そんなことを思い出しながら外を眺めていると、ドライバーがCDをかけてくれた。その曲は、どこかエキゾチックなヒーリングミュージック。日が傾いて空が赤みを帯びてきたとき、車が吊り橋(青馬大橋)にさしかかって街が見えてきた。その音楽と、静かに走るロールスロイスの窓から見える吊り橋のワイヤー越しの光景が、まるで映画でも観ているかのようにドラマチックだった。
あまりに音楽が香港の風景とマッチしていて気に入ってしまったので、「この曲、素敵ね」とドライバーに話しかけると、「これはスパのCDなんですよ」と。「なら、私、買って帰ることができるのね!」。ということで、今、そのオリジナルCDからここちよい曲が、私の書斎に流れている。
話を戻そう。素晴らしいプロローグで迎えられ、興奮気味な私を乗せたペニンシュラグリーンのロールスロイスは、静かに白亜のコロニアル調の建物の車寄せへと滑り込んだ。このホテルの名物でもあるページボーイが、白いユニフォームと白い帽子、そして白い手袋を身につけてドアを開けてくれた。レセプションでチェックインを済ませて19階へ。なんと、客室はアップグレードされていて、デラックスハーバービュースイートだった!
2015.09.11(金)
文・撮影=たかせ藍沙