ファーストクラスで世界一周だなんて手の届かぬ高嶺の花かと思いきや、実はちょっとの工夫でリーズナブルに実現することができるんです。アマゾン川、マチュピチュ、ウユニ塩湖、ナミブ砂漠、南アフリカ、オーストラリア、香港、インドネシア……。トラベルライターのたかせ藍沙さんが体験したとっておきの旅を、ここに公開!

香港で私が滞在したのは、ザ・ペニンシュラ香港の、上から4番目のカテゴリーの客室、デラックスハーバービュースイート。リビングからもベッドルームからもヴィクトリア湾の絶景を眺めることができるうえ、バスルームまでパノラマビューという絶景ルームだ。朝の光も、夜景も、あまりに景色が美しいので、部屋にいる時間には、ずっと窓の外を眺めていた。(撮影=たかせ藍沙)

ロールスロイスの送迎は優美な音楽を聴きながら

香港を代表するホテルのひとつ、「ザ・ペニンシュラ香港」。威風堂々としている。

 シドニーからの移動は、ファーストクラスのフライトがなかったので、カンタス航空のビジネスクラスで香港へ。

着陸直前に、カンタス航空のA320の窓から香港の島々が見えた。
右が降機口から到着ロビーまでお世話をしてくれた空港係員の女性。ここで、左の「ザ・ペニンシュラ香港」のスタッフにバトンタッチ。彼は荷物をロールスロイスまで運んでくれた。

 香港国際空港では、あらかじめホテルに送迎のロールスロイスをお願いしてあった。でも、送迎サービスは車だけではなかった。飛行機の降機口に私の名前を書いたプレートを持った女性が待っていた。

 彼女は手荷物を持ってくれ、ラゲージクレームでは私の大きなスーツケースをカートにピックアップしてくれて到着ロビーへ。そこでホテル側の送迎スタッフにバトンタッチ。ロールスロイスへと送り届けてくれた。

 そんな素敵なVIP仕様の送迎サービス(有料)を用意しているのは、「東洋の貴婦人」と称される、1928年開業の老舗ラグジュアリーホテル、「ザ・ペニンシュラ香港」。ずっと泊まりたいと思っていたホテルだった。

到着ロビーを出ると、ペニンシュラグリーンのロールスロイスが待っていた! ファーストクラスの旅にぴったりのステキな送迎サービスだ。安くはないけれど(汗)。

 大学を卒業後、まだこのような仕事をする前、女友達と香港に遊びに行った。格安ツアーを使っての節約旅だった。私が「ペニンシュラでアフタヌーンティーをしようよ」と提案すると、友人は「高すぎる!」と拒否。旅行初心者だった私は、ひとりで海外の高級ホテルに向かうことができなかった。それ以降、香港に旅する機会はあったが、なかなか立ち寄ることができなかったのだ。

「ザ・ペニンシュラ香港」には、1934年製の1台を含む15台のロールスロイスと、2台のミニクーパーがある。色は黒ではなく、ペニンシュラグリーンと名づけられた深いグリーンだ。

 ロールスロイスの中で、そんなことを思い出しながら外を眺めていると、ドライバーがCDをかけてくれた。その曲は、どこかエキゾチックなヒーリングミュージック。日が傾いて空が赤みを帯びてきたとき、車が吊り橋(青馬大橋)にさしかかって街が見えてきた。その音楽と、静かに走るロールスロイスの窓から見える吊り橋のワイヤー越しの光景が、まるで映画でも観ているかのようにドラマチックだった。

「ザ・ペニンシュラ香港」を象徴するページボーイ。あえて自動ドアにはしないのも伝統。ゲストが通るたびに彼がドアを開けてくれる。

 あまりに音楽が香港の風景とマッチしていて気に入ってしまったので、「この曲、素敵ね」とドライバーに話しかけると、「これはスパのCDなんですよ」と。「なら、私、買って帰ることができるのね!」。ということで、今、そのオリジナルCDからここちよい曲が、私の書斎に流れている。

 話を戻そう。素晴らしいプロローグで迎えられ、興奮気味な私を乗せたペニンシュラグリーンのロールスロイスは、静かに白亜のコロニアル調の建物の車寄せへと滑り込んだ。このホテルの名物でもあるページボーイが、白いユニフォームと白い帽子、そして白い手袋を身につけてドアを開けてくれた。レセプションでチェックインを済ませて19階へ。なんと、客室はアップグレードされていて、デラックスハーバービュースイートだった!

チェックイン直後の、デラックスハーバービュースイートからの眺め!

2015.09.11(金)
文・撮影=たかせ藍沙