海を上手く撮影するコツ その3
「海岸での物撮りではレンズ選びが大事!」
海岸にはたくさんの被写体が転がっている。例えば貝殻、砂、カニ、ヤドカリ、波の落とし物の小さな泡、濡れた砂浜に反射する光、どこからか流れ着いた小瓶、流木、長い年月荒波に削られて作られたガラスの破片、忘れられたビーチサンダル、枯葉、絡まって捨てられた釣り糸、ヤシの木、誰かが散歩に連れてきた犬など。
なぜかそういうものに魅かれてしまう私は時々、ビーチに移動式のフォトスタジオを作りたくなってしまうのだ。手の届かない水平線の風景写真に飽きたら、このような海岸で「物撮り」をすることをお勧めする。
しかし、小さいものに近づいて撮ろうとするとピントが合わない経験をしたことがないだろうか。各レンズには最短焦点距離というものがあり、それ以上近づくとピントが合わないのである。もっと近寄りたい場合はマクロレンズを使用する。
マクロレンズは高くて買えないし、持ってない! という場合はレンズの前に装着できるクローズアップレンズを持っていくとよいだろう。これで小さなヤドカリ君もバッチリ!
海を上手く撮影するコツ 結論
「一番大切なのは自ら海を楽しむ心」
ここまでテクニックを教えておきながら矛盾するかもしれないが、海の写真で一番大切なのは写真のテクニックでもなく洗練された構図でもなく、実は自ら海を楽しむ心。そのウキウキ感が写真に表現できたら最高なのである。
右:タヒチでよく飲まれているヒナノビールはかわいいタヒチアン女性が目印。
フォトコンテストで優秀賞を撮りたい! などという野望を一切取り除き、心のままに撮る。写真を仕事にしている私たちは的確に伝える写真も撮らなければならないので、そうも言っていられないのだか、いつまでも「心のままに撮る」ことを忘れずにいたいものである。
右:スパトリートメントの部屋の前には水に浮かべたプルメリアの花が飾られていた。
以上。次回は何のコツをお教えしようかと検討中。旅先の写真撮影でこんな時どうしたらいいの? など、取り上げてほしいテーマがあれば、CREA WEBの「掲載記事へのご意見・ご感想」フォームからご意見をお寄せください。
山口規子(やまぐち のりこ)
栃木県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業後、文藝春秋写真部を経て独立。現在は女性ファッション誌や旅行誌を中心に活躍中。透明感のある独特な画面構成に定評がある。『イスタンブールの男』で第2回東京国際写真ビエンナーレ入選、『路上の芸人たち』で第16回日本雑誌写真記者会賞受賞。著書にひとつのホテルが出来上がるまでを記録したドキュメンタリー『メイキング・オブ・ザ・ペニンシュラ東京』(文藝春秋)、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)や東京お台場に等身大ガンダムが出来上がるまでを撮影した『Real-G 1/1scale GUNDAM Photographs』(集英社)などがある。また『ハワイアン・レイメイキング しあわせの花飾り』『家庭で作るサルデーニャ料理』『他郷阿部家の暮らしとレシピ』など料理や暮らしに関する撮影書籍は多数。旅好き。猫好き。チョコレート好き。公益社団法人日本写真家協会会員。
Column
山口規子のMy Favorite Place 旅写真の楽しみ方
山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!
2015.06.21(日)
文・撮影=山口規子