旅館道 その3
「名物の遠州綿紬、温泉、鰻を楽しむ」

布団の上げ下げなど気にせずに寛げるベッドタイプ。
お部屋で蒸したてのお茶菓子と選んだお茶で一服。

 お茶の世界を楽しんだ後は、浜名湖を望む部屋でゆっくり。お茶香炉の立てる香りに包まれ、ここでもお茶を一服。ベッドタイプなので、朝も時間を気にせずゆっくりとできるのがうれしい。

 ご当地部屋の「遠州つむぎの間」には、遠州伝統の綿紬が障子やランプシェードなどインテリアに使われている。綿紬は、ロビーのテーブルセンターやラウンジのソファの張り地や浴場ののれんなど様々に使われている。

広々した「湖都の湯」の露天風呂。浜名湖から吹いて来る風も感じられそう。
円形の桶型の露天風呂はヒバのよい香りがする「華の湯」。
ぷかぷか浮かぶお茶玉。お茶に浸かった心持ち。

 温泉は2カ所。ヒノキ造りの広々とした内湯と露天風呂からなる「湖都の湯」と、内湯の湯殿と円形の露天風呂ともにヒバのぬくもりを感じる「華の湯」という趣きの異なる2つの湯を、男女朝夕入れ替わりで楽しめる。

 「湖都の湯」の内湯は、ビタミンとテアニンを豊富に含む茶葉を詰め込んだカゴが浮かべられていて「お茶玉美肌温泉入浴」という趣向。「華の湯」の方は、熟練職人が仕上げた桶型の円形露天風呂がユニークだ。

鰻に渋みのある本山茶をかけていただく「鰻のお茶漬け」。
白焼きと蒲焼きの2種類で趣向をこらした「茶葉と鰻の源平焼き」。

 浜名湖と言えば鰻。季節の基本会席では、台の物に鰻の頭としっぽの両方から取ったタレをじっくり付けて焼いた「界 遠州流 鰻の共だれ焼き」が出る。さらに特別プランの会席では、先付に「鰻煮こごり 緑茶風味」、焼き物として、茶葉を重ねた鰻の白焼きと春菊、山芋、菊花を巻いた蒲焼きである鰻の緑茶翡翠焼きを組み合わせた「茶葉と鰻の源平焼き」、そして、食事として「鰻のお茶漬け」も。

 これまで、日本茶は食事の後に一服するものととらえていた。だが、実はじっくりと嗜むものであるとその認識を改めさせ、世界を一気に広げてくれた「界 遠州」のお茶体験。新たな日本の文化に目覚める宿だ。

星野リゾート 界 遠州

所在地 静岡県浜松市西区舘山寺町(かんざんじちょう)399-1
アクセス JR浜松駅から無料送迎バスあり。約40分(要予約)
電話番号 050-3786-0099(界予約センター)
URL http://kai-enshu.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2015.06.13(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=石川啓次