星野リゾート 界 遠州(後篇)

 日本旅館の新しい魅力とその味わい方を追求する「旅館道」。今回は、お茶処の静岡の浜名湖畔の宿「星野リゾート 界 遠州」の後篇。ご当地ならではの楽しみであるお茶と遠州綿紬、そして手筒花火について、それぞれの達人に話を聞きながら、魅力の秘密に迫ります。

ご当地のお楽しみ その1
「静岡茶専門店がプロデュースするお茶の世界」

「界 遠州」で楽しめるお茶のいろいろ。

 まずは、静岡名物のお茶について、「竹茗堂茶店」静岡西部統括を務める西村寿洋さんにお話をうかがった。

――静岡がお茶処になったのは?

「鎌倉時代に中国から戻った聖一国師という人が静岡県安倍川の上流、足久保の地にお茶の種をまいたのが最初と言われていますが、江戸時代に徳川吉宗の倹約令によって贅沢品が制限されて衰退してしまいました。その後、竹茗堂の初代が城に出入りしていたことから、門外不出の、野生化してしまったかつてのお茶畑を教えてもらい、復興させて1781年にお茶の店として創業したのです」

左:静岡茶を専門として、1781年から続く老舗茶舗「竹茗堂茶店」の静岡西部統括・西村寿洋さん。「星野リゾート 界 遠州」にてお茶の生かし方などをアドバイスも。
右:お茶を一服。静岡ならではのワンランク上のリラックスを味わうことができる。

――静岡茶として有名なのは?

「お茶はたいてい生産地の名前で呼ぶのですが、まずは、当店も中心に作っている『本山』。浜松ローカルの『天竜』、『掛川』から『牧ノ原』にかけては歴史が浅く明治時代になってから。『川根』も新しいお茶ですが、茶葉を採ってから1年を越させるのが特徴。また、お茶の品種としては、害虫に強くうま味も濃い『やぶきた』が静岡では70%を占めます。しかし、お茶は、一品種だけだと味のバランスが取れないもの。合組というブレンドによって味も品質も安定するのです。茶師によるこの合組のノウハウによってお茶屋のランクが決まるのです」

お茶にまつわるいろいろな体験ができるラウンジ。

――「星野リゾート 界 遠州」でのお茶の楽しみは?

「まず、お茶にはいろいろな種類があることを知っていただき、その上で自分でセレクトした茶葉をお部屋に持っていってもらい、お茶を飲む楽しさを知っていただけます。浜松の地元産のお茶や新茶の八十八夜など、お茶処ならではのお茶をじっくりと深く味わっていただければと思います」

2015.06.14(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=石川啓次