星野リゾート 界 鬼怒川
温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。
前回および今回の旅のテーマは、“界めぐり”。栃木県の湯どころで、里山の魅力を追求した「星野リゾート 界 川治」に続いて、2015年11月に開業したばかりの「星野リゾート 界 鬼怒川」を訪ね、モダンにアレンジされた民藝の魅力あふれる湯の宿で過ごします。
旅館道 その1
「小高い丘の上の隠れ宿から眺望を楽しむ」
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栃木の山深い峡谷にある「界 川治」で1泊した後、鬼怒川温泉駅まで送迎してもらい、趣向の違う「界 鬼怒川」でもう1泊。温泉を堪能する“界巡り”では、それぞれの宿が提供するご当地のおもてなし“ご当地楽”や宿の個性もお楽しみの一つだ。
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「界 鬼怒川」は、鬼怒川温泉駅から車で5分ほどなのだが、そのアプローチはなかなかドラマティックだ。駅から温泉街を抜けて鬼怒川を渡り、しばらく行くと林間の小道に入る。そこを分けいり、小高い丘に登る。丘の上までの高低差30メートルの坂をどうスロープカーで登るかは、行ってみてのお楽しみ。丘の上には眼前に緑が広がる「界 鬼怒川」のエントランスがある。
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エントランスホールでは、大きな壼の上に水を張った皿とひしゃくが置かれている。これは、普通は日本庭園で地下に埋められている水琴窟をオリジナルに益子焼の壼で作ったもの。ひしゃくで水をかけると、心が安らぐような自然な水の音が心地よく流れる。
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右:大きな窓が開けた中庭に向けてあるロングソファ。
ロビーの前のトラベルライブラリーには、広々とした中庭に面するようにロングソファが置かれ、モダンな雰囲気。自由にコーヒーや紅茶、ハーブティーなどを飲みながらゆっくりと時間を過ごせるようになっている。
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「界 鬼怒川」の湯も身体に優しいアルカリ性の単純泉。「傷は川治、火傷は滝(鬼怒川)」と言われる癒しの温泉だ。露天風呂からは、春には花が爛漫に咲く桜並木を眺めることができる。湯上がり処には、麦茶、そして15~20時には地酒3種類も置かれていて飲み比べができる。
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2015.12.27(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=釜谷洋史