星野リゾート 界 川治

 温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。

 今回と次回の旅のテーマは、“界めぐり”。栃木県の湯どころとして有名な川治と鬼怒川、それぞれの地に構えられた界を巡って、旅館宿の個性と湯の楽しみを追求します。

旅館道 その1
「里山のもてなしを感じ美肌の湯に浸かる」

りっぱな長屋門の向こうに、渓谷の里山を思わせる宿が広がる「界 川治」。

 東京から列車に約2時間も乗れば、緑の山々や深い峡谷などすっかり自然に囲まれた別世界。そんな山深い栃木県の鬼怒川沿いには、江戸時代から温泉が開かれて、訪れる人々を癒してきた。

 この栃木の湯どころには「界 川治」「界 鬼怒川」「界 日光」と3軒の「界」がある。ご当地の個性を大切にするから、それぞれ魅力も違う。そこで今回および次回は、「界 川治」「界 鬼怒川」と連泊する“界めぐり”を楽しむという趣向の旅をご紹介したい。

 まず、1泊目は「界 川治」。川治温泉は、鬼怒川と男鹿川が合流する山深い峡谷にある。そこで素朴な里山でのおもてなしを受けて過ごすことができるのが「界 川治」だ。

ごとんごとんと音を立てて回る水車小屋の中では、そば粉が挽かれている。

 まず、りっぱな長屋門の向こうに、大きな水車が音を立てて回る小屋が見える。ここからエントランスに入ると、そこにはもう里山の家に招かれたような非日常な世界が待っている。

名産の野州麻が干された玄関先。
玄関には流水棚も設けられ、農家の軒先を思わせる。

 玄関先には野州麻が干され、スイカや飲み物を冷やすことができる流水棚が設けられている。

 反対側の土間のスペースは、“里山工房”。土間に腰かけてわいわい言いながら、6種類の大豆を好きに選んで臼で挽いてきな粉を作る“ご当地楽”が無料で楽しめる。また、土曜日限定で麻の紙漉き体験も。

自分で臼を挽いて作ったきな粉は、炭火であぶったマシュマロにまぶす(毎日15:30~17:00)。
臼を挽くのは意外に力が要る。軽く回るようになるまで挽いてきな粉を作る。

 川治温泉は、古くは会津西街道を旅する人の温泉宿場で「傷は川治、火傷は滝(鬼怒川)」と言われ、湯治場として愛されてきたそうな。単純アルカリ性で、湯温もほどよい美肌の湯だ。岩風呂と檜風呂の2つの露天風呂に、男鹿川のせせらぎが聞こえてくるのは山あいの温泉ならでは。ゆったりと贅沢な湯浴みを楽しめる。

露天風呂は、贅沢に檜風呂と岩風呂の2つ。夜はひょうたんライトが灯されて風情がある。
宿の外にも温泉が引かれ、渓谷を見渡す足湯に。

2015.12.26(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=釜谷洋史