星野リゾート 界 出雲(前篇)
温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。
今回は、1000年以上続く美肌の湯と海の幸の魅力にあふれる「星野リゾート 界 出雲」で、神様とのご縁を感じる旅を体験しました。
旅館道 その1
「1300年前の風土記にも登場する美肌の湯に浸かる」
出雲の地は、神話に彩られた不思議なところだ。旧暦10月(今年の暦では11月12日~12月10日)に7日間、全国から神様がこの地に集まって、人と人との縁も含めた様々な事柄を決めるのだという。このことから、10月が神無月と呼ばれるのに対し、出雲では11月に神在祭という伝統行事が行われる。
そして、「星野リゾート 界 出雲」のある玉造温泉は、1300年も前に編纂された出雲風土記に登場する美肌の湯として名高い。神様との繋がりを感じる土地に湧き出る美肌の湯は、温泉を味わう「旅館道」で一度は来たいと思っていた温泉だ。
「界 出雲」に飛行機でアクセスした時の最寄り空港は、その名も「出雲縁結び空港」。車でそこから約40分。塩分を含む水でしじみが豊富に獲れる宍道湖や新鮮な魚介を水揚げする境港など海にも近いが、緑に囲まれて立つ宿は落ち着いた佇まいで、静かな気を感じる。
まずは、旅の疲れを癒すべく、美肌の湯にゆっくりと身を委ねる。大浴場の入り口には「玉造温泉について」という一文が掲示されていて、出雲風土記には「玉造温泉は一度入浴すると容貌は美しくなり、さらに入浴すれば、すべての病気は治る。昔から今まで効果が出なかったことがない。このため、人々は神の湯と言っている」という意味のことが書かれてあるという。
温泉に多く含まれる硫酸イオンによって肌に水分を補給し、塩化物泉の塩が肌にヴェールを作り、保湿に優れるのだという。弱アルカリ性のクレンジング作用でお肌がきれいになったところで、保湿されてしっとりするというわけだ。大浴場内には源泉だけを貯めた湯槽があって、そこにガーゼを浸して顔パックをしたりも出来る。確かに、ほどよい湯温の温泉にゆっくりと浸かった後も、突っ張りがなくしっとりとした肌触りだった。
浴場内に月見酒として日本酒、湯上がりにお茶や果実酢の飲み物とアイスキャンディが置かれているのもうれしい。
「界 出雲」は、全室に露天風呂が付いている。客室でゆっくりと月を見ながら温泉を楽しむというような洒落たプライベートな過ごし方もできる。
2015.10.17(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹