星野リゾート 界 箱根(後篇)

 ほっとするような落ち着いた時間、いつもと違う非日常の過ごし方ができる日本旅館に泊まる旅「旅館道」。「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡るこのコラムでは、温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅をします。

 「星野リゾート 界 箱根」の後篇では、館内を様々に飾る箱根寄木細工や小田原提灯を作る職人の方にインタビュー。その達人の技を紹介します。

ご当地のお楽しみ その1
「江戸時代から続く寄木細工に彩られた客室」

露木木工所の4代目、露木清高氏が初めて制作した大作だという寄木机が置かれた「箱根寄木の間(特別室)」。

 箱根湯本温泉郷にあって、緑濃い湯坂山と須雲川のせせらぎに挟まれた「星野リゾート 界 箱根」。星野リゾートの「界」が和心地を醸すわけは、温泉旅館としての伝統に加えて、その地域で活躍する伝統工芸作家とのコラボレーションにある。

寄木細工のキーホルダーや食器。市松模様は素朴に見えるが、作るのが非常にたいへんだ。

 「界 箱根」では、箱根の豊かな自然が育てる多くの木を生かした「寄木細工」がロビーを飾ったり、キーホルダーや食事の器に使われたりと、身近な存在になっている。また、ご当地部屋として特別室と洋室の「箱根寄木の間」を設けている。

左:「箱根寄木の間(特別室)」の室内には水屋も。寄木細工のお盆や酒器、茶道具などが置かれている。ちらりと左手に見える襖の取っ手も寄せ木細工。
右:木が本来持つ色を生かした美しい花器。自然が作るモダンな文様。

 ご当地部屋の「箱根寄木の間(特別室)」は、大きな机、水屋に置かれた茶道具、襖の取っ手など、優しい木の風合いながらモダンなデザインの寄木細工に囲まれた部屋だ。緑に包まれた須雲川のせせらぎが楽しめる月見台もあり、部屋の中で贅沢な時間を過ごすことができる。紅葉の時期ともなれば、この緑が真っ赤に染まり圧巻だそう。

「箱根寄木の間(洋室)」は、最上階の角部屋にあたり、最高の眺望を誇る。

 「箱根寄木の間(洋室)」は、ゆったりした客室にローテーブルやトレイ、コースターなどの寄木細工が置かれている。壁やちょっとした内装のアクセントも寄木細工で、白を基調した室内に木の色が美しく映える。

「箱根寄木の間(洋室)」の壁を飾るのは露木木工所の3代目、露木清勝氏の作品。富士山と須雲川の流れをイメージしている。

2015.08.04(火)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹