旅館道 その3
「里山のもてなし会席と水車小屋でのひと時を楽しむ」

左:氷できりっと冷やした新鮮なふぐの薄造りと目も舌も楽しい八寸。
右:ふぐのぷりっとしたコラーゲンに、野菜もいっぱい入ってヘルシーなふぐちり鍋。

 里山のおもてなしは食事にも感じられる。まずは、ずいきの土佐和えや小松菜と焼き椎茸のおひたしなど、どこから箸をつけるか迷う八寸。そして、ふぐの薄造り。台のものに出て来るのは、ふぐちり鍋だ。

 「海のない栃木県でふぐ?」と不思議に思ったら、これは栃木県那珂川(なかがわ)町で養殖されている温泉ふぐなのだ。過疎の進んでいた那珂川町の町おこしとして、そこに湧いていた温泉の成分が海水に近いことからトラフグの養殖が出来るのではないかという発想から生まれたもの。実際の海水より塩分が低く魚体への負担も少ないことから、ふぐの成長が早く、毒もない。淡白な薄造りをちり酢でいただき、ふぐちりの鍋もあっさりとヘルシーでおいしい。

水車小屋では、昼間は焼きたてのそば粉クレープが楽しめる。

 門を入ってすぐの水車小屋では、昼間は水車が回す臼で挽かれたそば粉のクレープを炭火であぶったりなど、季節によって異なるおもてなしサービスがある。

夜には、地酒3種を竹筒で熱燗にして楽しむ水車BARに。とちおとめなどを使ったカクテルもある。

 そして、夜は水車BARに変身。栃木の3種類の銘酒を飲み比べたり、全国一のイチゴの生産県らしいとちおとめを使ったカクテルを味わったりすることができる。静かな山の宿で過ごす大人の時間もなかなか乙なものである。

 ほっこりとした里山での滞在を楽しみ、もう一日、近くの「界 鬼怒川」で湯を楽しむ。そこには、土地のユニークな民芸を“体験できる”温泉宿が待っていた。(次回に続く)

星野リゾート 界 川治
所在地 栃木県日光市川治温泉川治22
電話番号 050-3786-0099(界予約センター)
URL http://kai-kawaji.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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2015.12.26(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=釜谷洋史