星野リゾート 界 加賀(前篇)
温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。
今回の宿は、加賀百万石の伝統が今に甦る「星野リゾート 界 加賀」。
旅館道 その1
「非日常が演出されたアプローチに感動」
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2015年3月に、北陸新幹線が開通して以来、首都圏から近くなった金沢。東京から「界 加賀」のある山代温泉までは、列車を乗り継いで最短で約3時間。飛行機で小松空港まで飛ぶなら、そこからはレンタカーを使えば30分ほどで到着する。
奈良時代に高僧行基が発見したという歴史ある山代温泉は開湯1300年。源泉が流れる共同浴場「総湯」をぐるりと囲むように宿が並ぶ街並みは、「湯の曲輪(ゆのがわ)」と呼ばれている。
その中で、ひと際目を引く朱の紅殻格子と赤壁の建物が「界 加賀」だ。元は、書家・陶芸家、そして美食家としても知られた北大路魯山人が定宿としていた1624年創業の「白銀屋」。その伝統の意匠はそのままに鮮やかに甦らせ、新築の8階建ての客室棟を構えて2015年12月に「界 加賀」として再開業した。
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右:歴史を積み重ねた白銀屋時代の瓦がさりげなく置かれている。
紅殻格子(べんがらごうし)が映える建物は、東京の歌舞伎座の建て替えや重要文化財の修復をしてきた伝統建築の専門家が、元の梁や柱を一度取り外し、丁寧に組み直した。少し傾いていた建物が、これで立て直され、塗りを施されて甦ったそう。
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加賀前田家の梅鉢紋の暖簾が揺れる入り口をくぐって館内に入ると、枠の内と呼ばれる大黒柱に太い丸太梁が組まれた高い天井から、加賀水引のオブジェが光に包まれて下がっている。白とラメが輝く2色の水引は、旅館らしい落ち着いた空間の中ではっとするような美しさで、非日常へのアプローチが演出されているようだ。
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館内には魯山人の作品がさりげなく置かれ、中庭を望むトラベルライブラリーには大きな書が掛かる。
客室棟へは橋を模したような渡り廊下で。その脇の地面に敷かれているのは、友禅流しをモチーフにしたモダンな九谷焼のタイル。中庭から水の流れが続いているかのように見せ、現代風の枯山水を渡るという趣向だ。
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2016.04.23(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹