旅館道 その2
「美肌の湯に浸かった後は雅な器で食事を堪能」
かつて魯山人も浸かったであろう温泉の湯は、柔らかで温まる。弱アルカリ性の泉質で、美肌の湯と言われているのだそう。
右:露天風呂を楽しめるお部屋も。
湯上がり処には、冷たい加賀棒茶、そして朝はハチミツレモン水、15時から19時まではスパークリングワインとビールが用意されていて、ほっとした時間を過ごすことができる。
また、テラスにプライベートな露天風呂を備えた客室もある。
「界 加賀」の夕食では「器は料理の着物」という魯山人の意を受け継いで、凝った料理を盛りつける器が美しい。
先付の“海のひとしな 山のひとしな”は二段重に入っている。山中漆器のお重は、フタには白山風露の花、下段の周りには加賀三山と白山連峰が描かれている。フタを開けると、上段に白バイ貝の三杯酢と塩昆布で味付けた春キャベツという、海のひとしな、下段には香りの柔らかな金沢春菊に練りゴマと西京味噌で和えた鶏肉がのる、山のひとしな。お重を開ける楽しさと、お酒がすすむ山海の味を堪能できる。
八寸は、前田家の家紋である梅鉢をあしらった九谷焼と山中塗の2つの器に分ける遊び心ある盛りつけ。どれから箸をつけるか迷ってしまう。
台の物は、九谷焼に盛った、磯の香りのわかめで包み蒸しした鮑を肝ダレで。
料理が引き立つ九谷焼の器は、界の総料理長が若手作家に依頼して、焼いてもらったという。有名な天狗舞や菊姫をはじめ、加賀の地酒・獅子の里など、味わい豊かな日本酒が各種用意されているので、海の幸山の幸を生かしたお料理とのマリアージュを楽しむのもよいだろう。
2016.04.23(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹