星野リゾート 界 伊東(前篇)
温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。
今回の宿は、東京から車でも電車でも2時間以内という近さにあって、心落ち着く佇まいの「星野リゾート 界 伊東」。かけ流しの湯に浸かる寛ぎの旅を紹介します。
旅館道 その1
「大浴場や足湯、源泉プールで美肌の湯を堪能」
始まりは平安の昔といわれる歴史ある伊東の温泉。江戸時代には、3代将軍家光にいで湯を献上し、明治に入って以降は、幸田露伴、川端康成、与謝野晶子・鉄幹など多くの文人に愛されてきた。
そんな伊東の豊かな湯の宿「星野リゾート 界 伊東」に着くと、玉砂利のゆるやかなアプローチの向こうに、エントランスが光の中に浮かぶ。
そこにかかる扁額飾るのは「壼中日月長」の文字。意味を聞くと、「壼の中には別天地があって、楽しく時を過ごしていると、いつの間にか長い月日が流れていた」という、中国の『後漢書』にある故事に由来する禅語だという。なるほど、非日常への入り口にふさわしい言葉だ。
「界 伊東」では、4本の源泉から採った湯を、全館でかけ流しとして使っている。大浴場では、ほのかな木の香りと肌触りが優しい古代檜の大きな湯船が、そのままゆるやかに露天の岩風呂に続く。湯殿の縁に枕木があってゆっくりできる内風呂と、野趣に富む外風呂になっているのだ。
右:内風呂として客室に備えられた露天風呂も源泉かけ流し。
長湯をしすぎないよう、何回もこまめに入るのが、美肌の湯を楽しむコツ。プライベートな湯の時間を楽しめる家族風呂は、宿泊当日の予約が必要(先着順)。露天風呂付き客室も全34室のうち5室設けられている。
そして、日本庭園を眺めながら入れる源泉かけ流しの足湯と、一年中適温に保たれた源泉プールもある。湯上り処には、冷たいビールと季節のフルーツゼリーなどが置いてあって、ほっと一息つける。源泉プールには、子供用のライフベストやデッキチェアなども備えられ、家族で楽しむことができる。
2016.02.27(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵