星野リゾート 界 伊東(後篇)

 温泉を備えた旅館を味わい、その土地ならではの文化や自然の魅力など日本を再発見する旅「旅館道」。このコラムでは、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」を巡りながら「旅館道」を楽しみます。

前回に続く「星野リゾート 界 伊東」の後篇では、客室に彩りを添えるつるし飾りやガラス工芸、伊東市の花である椿を使ったアクティビティ、そして、春から夏に楽しみな伊東の花暦を紹介します。

ご当地のお楽しみ その1
「優しい色が美しい椿の花びら染めを体験」

日本庭園で咲いていた椿の花は、凛として美しかった。

 椿は、日本固有の花木。「優美」と「誇り」が花言葉で、日本女性の美と通じるところがあるのかも。暖かい伊豆に育ち、しっかりとしたその木は防風林の役目も果たしてきたそう。11月から3月ぐらいまでが季節で、伊東では小室山公園のつばき園などでいろんな品種の椿が次々に花開く。ここ「界 伊東」の日本庭園にも赤い椿の花が咲く。

 この椿の花を使った“椿の花びら染め”を「界 伊東」では、冬と春限定の“ご当地楽”として毎日、無料で体験できる。染液は、落ちた椿の花びらを拾い、汚れを落として作ったもの。スタッフが椿のことを学びに伊豆大島に行った時に出会ったのだそう。

子供には、まゆ玉も不思議なものに感じられるかも。椿の花びらの染液がきれい。

 鎌倉時代から修善寺和紙の技術が引き継がれた和紙や、養蚕が盛んだった伊豆では馴染みのあるまゆ玉を染めることができる。染め方自体はとても簡単で、染液に和紙やまゆ玉を浸すだけ。椿の花びら染め体験は、毎日15時30分から。当日の予約が必要。

オリジナルのお土産がいい思い出になりそう。

 翌朝、染め上がった和紙やまゆ玉を使って、和紙ならちぎり絵のしおりやはがきを、まゆ玉には細工をしてかわいい置物に仕上げる。ちょっとした旅の思い出にもなるし、子供にも簡単にできるアート体験なので、とても喜ばれそう。朝9時から、前日の予約でこちらも無料。

 この“椿の花びら染め”体験をした部屋は、その名の通り、椿の掛け軸や椿の柄のテーブルクロスがかかって、まさに椿一色。そして、床の間にかわいい“つるし飾り”がかかっている。

椿の掛け軸につるし飾りといった女性らしい設え。

 この“つるし飾り”は、伊豆の稲取温泉に江戸時代後期から伝わる雛祭りの風習。お雛様を購入できる家庭はまれだった時代に、手作りで子供や孫の初節句を祝おうと生まれたもの。今では春のイベントの一つとしてつるし飾りまつりが催されるなど、伊豆地域の春の風物詩になっているものだ。

2016.02.28(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵