ご当地のお楽しみ その2
「地元作家ならではの工芸作品に触れる」
「界 伊東」には、ご当地部屋「つるし飾り 椿の間」という特別室がある。この部屋の広い床の間には、子供の成長を祈り、いろいろな思いを込めて作った雛飾りが付いたつるし雛がぶら下がっている。
右:床一面に置かれた椿も、趣がある。
「界 伊東」のスタッフがつるし飾り作家の齋藤美知子氏と一緒に作り上げたもので、色とりどりの雛にはそれぞれ意味がある。
「這い子人形」はハイハイをたくさんして育つように、「鯛・金目鯛」はおめでたい暮らしが訪れるように、「亀」は長寿にあやかれるように、「うさぎ」は赤い目が護身と魔除けの力を持つ、というように。そして、愛らしく花開いている「椿」は優雅で美しい女性に育つようにとの思いを込めて、スタッフ自ら一針一針縫って作ったものだという。
床にも赤い椿がたくさん散らされて、とても温かみを感じるオブジェになっている。
この周辺では、ガラスの原料であるケイ砂が採れる。そのことから、この地のガラスは西伊豆ガラスと命名されるぐらい有名で、ガラス工房も多い。
このつるし飾りにも、布の雛飾りに混じってきれいなガラス玉が吊るされている。その他にも、ご当地部屋にある磨りガラスに椿の模様が浮かび上がるランプや、愛らしい鳩の置物などの作品は、ガラス作家の岩沢達氏によるもの。
「『界 伊東』とは、“伊豆ガラスと工芸美術館”の紹介で出会い、界ブランドが大切にしている伝統と現代的な感性の融合を、つるし飾りに表現したいというスタッフの思いを聞きました。自分は布のちりめん細工が好きだったので、このコラボレーションがたいへんにうれしかったですね」と言う岩沢氏。
スタッフからの依頼を受け、ガラスで色を重ねていくのが難しい椿の花も作った。岩沢氏は、自らの名前にちなんだ龍(タツ)をモチーフとした作品の制作を10年以上ライフワークとしているが、和のモチーフは、これからも追求して独自の作風を築いていきたいという。
ご当地部屋には、バスルームに日本産ヤブツバキの種だけを原料に非加熱製法で作られた生椿のオイルや椿石鹸が置かれている。温泉に浸かり、保湿力、浸透力に優れたこの生椿オイルを使えば、美肌効果がますます増しそうだ。
2016.02.28(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵