「星野リゾート 界 熱海」(後篇)
日本旅館の魅力とその味わいを気後れなく楽しむための心得を提案する「旅館道」。その1軒目は、「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」の中の一つ「界 熱海」。日本旅館らしいよさを楽しむ「旅館道」を考えながら、「界 熱海」ならではの過ごし方も見てみましょう。
この宿の“ならでは” その1
「東京から抜群のアクセスで、和と洋の極みを味わえる宿」
「界 熱海」は、日本の伝統旅館のイメージが強いが、本館と趣きを異にする別館の洋館「ヴィラ・デル・ソル」もある。その両方に伝統と歴史的な背景があって、時を経たものだけが持つ雰囲気がある。
東京から新幹線で熱海駅までは約45分、駅から「界 熱海」まではタクシーで約5分。 伊豆山の頂きにあって海が望める本館も、麓にあって波打つ海岸がすぐ前のヴィラ・デル・ソルも、部屋では潮騒の響きが心地よい。都心からのこの近さにありながら、和と洋の別世界が迎えてくれるのだ。
本館は、元「蓬莱」という江戸末期に創業した老舗旅館であり、別館のヴィラ・デル・ソルは、元は紀伊徳川家15代当主である徳川頼倫が東京の飯倉に明治32年(1899年)に建てた日本初の西洋式図書館“南葵文庫”の旧館で、国の登録有形文化財に指定されている。
徳川頼倫は明治時代にロシアのニコライ2世の戴冠式に参列、イギリスのケンブリッジ大学で政治・経済を学び、英国の気風を身につけていたという人物。木骨瓦張り漆喰塗りの西洋館の中は、高い窓から光が差し込み、歴史が放つ美しさに満ちている。南葵文庫は、大磯の旧紀州藩領内に移って徳川家の別邸となった際に「ヴィラ・デル・ソル(太陽の館)」と名付けられ、今はこうして「界 熱海」の一部となっている。
7室の客室は増築によるもので、ベッドが入りモダンなホテルのような造り。本館に泊まって、食事はこちらでという選択が出来るし、別館に泊まって階段でつながった本館の温泉に入りに行くということも出来る。
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2014.05.25(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=深野未季