旅館道 その3
「工夫に満ちた会席と界巡りならではの朝食を味わう」
夕食は、会席。次々に地域の素材を生かした季節感のある料理が運ばれてくる。
まずは、組子の蓋が美しい木箱に入った八寸。たらば蟹の小袖寿司や南京の厚焼き玉子などどれも楽しめる。お造りは、らっきょうのたまり漬けをヤシオマスで巻いたものや、生ゆばの山ワサビ添えなど9種類もの取り合わせで、それぞれに工夫が凝らされている。
メインの台のものは龍王峡の龍神伝説にちなんでいる。ヤシオマスや渡り蟹、かんぴょうや巻ゆば、野菜などの具材を入れた味噌仕立てのスープに、800℃の焼け石を投入するというダイナミックな龍神鍋。熱く焼けた石を鍋の中に入れると、一瞬でぐらぐらと汁が沸き立ち、湯気が上がるさまに驚かされる。ふうふう言いながらいただく鍋に身体が温まる。
界巡りでのお楽しみは朝食でも。2軒目となる界で、郷土料理など特色ある界めぐり朝食を出してくれる。
右:「界 川治」が2軒目になった場合の川治の界めぐり朝食。“鬼子蔵汁”と“とばっちり”は、ともに古くからの伝承に基づく料理だ。
「界 鬼怒川」では、神社がお供えにも使う伝統の一品“しもつかれ”を界流にアレンジしたものが出た。大根と人参をおろした“おにおろし”とヤシオマス、豆や油揚げを酒粕や酢、醤油などの調味料で煮込んだものだ。また、里芋の田楽串や白身魚の餡かけ豆腐に山わさび添えなどヘルシーな味わいの料理が並ぶ。
逆に、今回前泊した「界 川治」が2軒目という順番になった時には、川治では、野菜がいっぱいの“鬼子蔵汁”やかんぴょうとニラを煮て温泉卵と一緒に出す“とばっちり”が提供される。
渓谷の里山の宿らしい「界 川治」とモダンながらとちぎ民藝を身近に感じる「界 鬼怒川」。共に古くからの湯どころにあって、それぞれの個性を楽しみながら、ゆったりと温泉に浸かる旅ができた。
星野リゾート 界 鬼怒川
所在地 栃木県日光市鬼怒川温泉滝308
電話番号 050-3786-0099(界予約センター)
URL http://kai-kinugawa.jp/
小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel
Column
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2015.12.27(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=釜谷洋史