星のや 京都(後篇)

 温泉を備えた和の宿の魅力を追求する「旅館道」シリーズ。「和心地」な温泉旅館をコンセプトとする星野リゾートの「界」と、「現代を休む日」をコンセプトにした和のリゾート「星のや」の中から今回ご紹介するのは、嵐山にある非日常のリゾート「星のや 京都」。この至福の空間で、京都に浸る時間を過ごします。

京都を“感じる”
「光が織りなすモダンな幽玄の世界『星のや花灯路』」

霧の演出も相まって「奥の庭」は不思議な「朝霞の庭」に。

 嵐峡に築100年の建物が時を超えて25室の宿となり、非日常の世界で京都の粋を味わえる舞台となった「星のや 京都」。緑と大堰川の清流に挟まれ、伝統が現代に美しく表現された空間に身を置いて寛ぐのもよいが、四季折々のお楽しみもいろいろ用意してくれている。

夕刻、小さな灯りがひとつひとつ灯される。

 そのひとつが、時を忘れさせ、心に残る冬景色を提供するイベントだ。京都の夜の風物詩として、東山地域や嵯峨・嵐山地域で始まった灯りをテーマにした催しが「京都・花灯路」。この光で嵐山が包まれる季節に「星のや 京都」でも、光、音、風が織りなすアート「星のや花灯路」が開催される。演出はミラノサローネなどでも光のアートを手がけた照明デザイナーの岡安泉氏。

蔵を改装した「Salon & Bar蔵」は、高い天井とガラスのテーブルに星が瞬く「星空BAR」になる。

 施設内に登場する5つの光のアートは、どれも静かな夜の闇に浮かび上がり幽玄の世界を演出する。陽が落ちる頃、「奥の庭」にはまるで川面にかかった霞のような中にぼうっと幾つもの光が浮かび上がる。朝もやの嵐峡の中に足を踏み入れたような不思議な空間が現れるのだ。

 和室パブリックでは、水の滴り、ガラスの煌めきが襖に反映して、和室の内外で幻想的な光のアートが楽しめる。また、ライブラリーの窓辺には、舞い散る雪景色をイメージした光の小雪が浮かび上がる。2015年の「星のや花灯路」は3月20日(金)まで。季節限定のお楽しみだ。

「Salon & Bar 蔵」では、希少な山崎25年物など、こだわりの国産ウイスキーの数々を味わうことができる。

2015.03.01(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵