フードミュージックからは時折大ヒットが生まれる

伊藤 ところで、今回の楽曲に関してですが、正直いうとすぐにヒットするとは言いづらい。でも、彼女の存在自体がユニークだし、2015年に来そうな感じもする。NHKの「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」みたいなきっかけがあれば大ヒットもありえますよね。「だんご3兄弟」からも随分たちましたからね。フードミュージックって、10年~15年に1度くらい、とんでもない大ヒットが生まれる感じがありますからね。期待して見守りたいと思います。

山口 この個性を活かして、AKBグループやジャニーズへの楽曲提供や海外発信などを伊藤さんが仕掛けて下さい(笑)。

伊藤 難しいお題出しますね(笑)。難しいお題といえば妄想分析なんですが、今回は楽曲というよりも、アーティストから妄想分析してみたいと思います。
 おばあちゃんが死んだ。大好きだったおばあちゃん、しわくちゃだけど笑顔の可愛いおばあちゃん、おでこに小さなこぶがあったおばあちゃん。ガンでそんなに長くないと母から聞いたときは、実感が湧かなかったけど、3時間くらいしたらなんか悔しいという感情がこみあげてきて涙がでた。最近、顔を見せに行っていない自分がバカすぎて、この数日間の友達・彼氏・高校・その他のどうでもいい日常が憎くなった。
 ガンのことを知った日から高校は休んで、おばあちゃんの家に泊まり込んだ。もう先が長くないということもあって、おばあちゃんの希望で家に帰ってきていた。もう手の施しようもないということだ。叔母さんが泊まり込みで付き添っていたけれど、かわりに私が傍にいると宣言した。おばあちゃんもそれを受けいれてくれた。
 おばあちゃんは一日のほとんどをベッドの上で過ごしていた。それでも庭にある畑を私がいじっていると、縁側まできて、椅子に座って私を眺めていた。そして、畑のトマトのことや茄子のこと、韮のこと、オクラのことを話してくれた。あと、畑の横のざくろの木の思い出も話してくれた。わたしも畑いじりの手を休めて、おばあちゃんの前に座り込み話を聞いた。
 あるときピーマンを収獲していたら、おばあちゃん特製のピーマンの肉詰めの作り方を教えてくれた。さっそく、その日の夜に作ってみた。おばあちゃんはひと口だけ食べて「おいしいねぇ」と言ってくれた。そしたら、なんだか涙がでてきちゃって、とまらなくて……。私は泣きながらおばあちゃんのピーマンの肉詰めを11個も食べた。ちょっと味が薄かったけど、本当においしかった。
 その日の夜、おばあちゃんは逝ってしまった。朝起きてごはんを用意してから、おばあちゃんに声をかけたら、もう返事がなかった。母に電話をして、母が来るのをおばあちゃんの横で待った。テーブルで湯気を揺らしている、ごはんとみそしる、それと昨日の残りのピーマンの肉詰め1個がなんか寂しそうだったので、食べた。おばあちゃんと一緒に食べた。おばあちゃんのピーマンの肉詰め。

山口 今回の「妄想分析」は、ぐっと来ました。小説も書いた方がよいのではないですか? あのゆるふわな感じの音楽から涙腺を刺激する世界を生み出すのは才能ですよ。

伊藤 本当ですか? そういってもらえると嬉しいです。どこかいい出版社ありますか?(笑)

DJみそしるとMCごはん「OPQ EP」
キューンミュージック 2014年10月1日発売
通常盤1,165円、キューちゃん盤(期間限定生産)917円(税抜)
■2013年冬にメジャーデビューを果たした彼女にとって、この作品が初めてのシングルとなる。通常盤には「おまんじゅう」「PIZZA」「きゅうりのキューちゃん」の3曲を、キューちゃん盤には「きゅうりのキューちゃん」とそのリミックスの2曲を収録。

2014.09.30(火)
文=山口哲一、伊藤涼