パーティは、漫談あり、オペラあり、合唱団ありの一大イベント

 めったに食べられないご馳走もさることながら、楽しいのは、なんといっても、ゲストが繰り広げる気合の入ったパフォーマンス。アントニオの勤務先である警察の合唱同好会は、テレサ・テンの「甜蜜蜜」と「月亮代表我的心」を熱唱。そんな往年の名歌謡曲もあれば、ダンスあり、マジックあり、漫談あり、なかにはプロ並みの芸を披露するゲストまでいて、ステージから目が離せない。

ピンクのラメ色ジャケットに蝶ネクタイのおじさん、トークも歌もステップも上手。「興行に来たマイナーな漫才師に違いない」と思っていたら、新郎の上司(たぶん、ものすごいエリート)だった。

 そんな一大パフォーマンスが行われている間、新郎新婦はポルトガル語や広東語が飛び交うゲストのテーブルをまわって、全員と乾杯をする。ゲストは、親族以外は普段着の列席者がほとんどだが、これもマカオの習慣。かしこまることなく、温かく二人を祝福する、そんな感じがマカオらしくていい。

新郎新婦は列席者のテーブルをまわって何度も「乾杯!」。ゲストは、ご馳走を食べ、歌を歌って友人を祝福。とても温かな結婚パーティーなのだ。
イベントの間じゅう、新婦のママが配りまくっていた利是袋。封を開けると、20パタカが。

 まるでディナーショーのようなウエディングパーティーが終わったのは、23時近く。おいしい料理をたくさん食べ、ステージを楽しみ、ほろ酔いでホテルに帰り、新婦のママからもらったポチ袋を開けると、中には20パタカ(1パタカ=約13円)が。マカオには、お祝いの席では年齢に関係なく、既婚者から未婚者に利是(プチご祝儀のようなもの)を贈る習慣がある。これには、独身者は一人前ではない=利是を貰う立場、という意味があるのだとか。当時、独身だった私は、新婦より一回りも歳上でありながら、ありがたく20パタカをいただいた。その後、二人の間には可愛らしいベイビーも誕生。そして相変わらず、私がマカオを訪ねるたびに、いつも力になってくれている。

中国の伝統衣装からドレスまで、美しい花嫁姿も見られて楽しかった結婚のイベント。「祝白頭偕老、百年好合!」(ともに白髪となるまで、仲睦まじく!)

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

Column

トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2014.09.09(火)
文=芹澤和美
撮影=芹澤和美、西森純子