マカオを初めて訪れた人は、この街が擁する食の豊かさに驚かされるだろう。本格的なポルトガル料理にマカオ料理、本場の広東料理、東南アジアからの移住者が集うエスニックレストランに、イタリアンやフレンチの名店……。カジノが24時間営業のため、明け方まで開いている店も珍しくない。マカオは、小さな街のいたるところで、いつでも美味しそうな香りを漂わせている。

 日本にも香港にもない独特のグルメといえば、東西の食文化が入り混じったマカオ料理だ。意外と日本人の口にもなじむマカオ料理には、長い歴史のストーリーが刻まれている。15~16世紀の大航海時代、ポルトガルの船は、アフリカ、インドのゴア、マラッカ王国(マレーシア)など寄港地の香辛料や料理法を、航海の終点であるマカオに持ちこんだ。そして、伝統的な広東料理と融合して生まれたのが、マカオ料理だ。世界制覇を夢見て海を渡る男たちが港みなとで各国の料理と出会い、それらが調和して生まれたマカオ料理は、大航海時代のロマンが薫る、歴史の産物でもある。

ややスパイシーなアフリカンチキン。煮込み風だったり、バーベキュー風だったりと、店によって調味料や調理法が異なるので、食べ比べもおもしろい

 代表的なマカオ料理の「アフリカンチキン」は、まさに大航海時代が生んだ一品。原型は、15世紀にバスコ・ダ・ガマがモザンビークで食べたというチキングリルで、そこに、インドのスパイス、マラッカ王国のココナッツミルク、広東のバーベキュー技術がミックスして、この料理が生まれた。ほとんどのマカオ料理店で食べることができ、バーベキューだったり、煮込み風だったりと、それぞれにシェフの味を競い合っている。

「カリーハイ」は、新鮮な蟹をカレーで味つけしたもの。スパイスが香ばしく、ポルトガル風パンにも、炊いたお米にもよく合う。「ミンチィ」は、豚ひき肉と玉ねぎ、ポテトなどをじっくり炒め、醤油とスパイスで味つけした家庭料理。半熟目玉焼きを乗せたり、ご飯と混ぜて食べるのが一般的だ。

左:カリーハイ。新鮮な蟹を、カレーで味付けしたもの。スパイスとコリアンダーの香りが入り混じり、なんともエキゾチックな風味
右:醤油味といい、ご飯に混ぜて食べるスタイルといい、どこか懐かしさを覚える家庭料理、ミンチィ

 クリスマスシーズンにマカオを訪れるのなら、この時期ならではの料理もぜひ試してみたい。「Tacho(タッチョ)」は、鴨肉や鶏肉、豚皮、ポルトガルソーセージ、腸詰、キャベツ、トマトなど、ポルトガルと中国の食材を一緒に煮込んだシチュー。少々クセがあるので好き嫌いはあるが、季節限定のマカオ料理だ。ビスケット生地の中にカレー風味の白身魚が入ったパイ「Empada(エンパーダ)」も登場する。

 数あるマカオ料理店の中で、雰囲気も楽しめる店が、「内港餐廳」と「海湾餐廳」。どちらも店内はコロニアル風で、定番のマカオ料理も揃う。タイパ島にある「公鶏葡国餐廳」はインテリアがポルトガルの農村風で可愛らしい。メニューも写真付きで選びやすいだろう。

左:タイパ島の官也街にある「公鶏葡国餐廳」は、素朴で可愛らしい佇まい
右:「内港餐廳」は料理同様、建物も、中国とポルトガルをミックスしたマカニーズ様式の外観

» 各店舗の詳細データは3ページ目に掲載しています。

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2012.12.13(木)