くだらない妄想が現実味を帯びてくる

 よく見ると、それはコンビニ等で売っているメジャーブランドではなく、地方に行った時などに見かける格安ブランドのようでした。

 あの不可思議な出来事が起こった日に、家の前で見かけた古びた自動販売機。

 運び出しを始める前に、Bさんが『安いからせっかくだし追加でお茶買っときますわ』と自腹を切って皆の分を買ってくれた、あの格安ブランドのお茶。

 確証はありませんでしたが、その光景がはっきりとブラッシュバックしてきたのです。

 カシャン。

 力なく指を離すとドアポストの蓋は小さく音を立てて閉まりました。

「何、なんかあったの!?」

「……誰もいないよ。もう、帰ろうぜ」

「え? お、おい!」

 なんとなく、これ以上その場に居たくなかったのだそうです。

 いえ、正確に言うならあの日、赤いスニーカーを履いて慌てて外に出ていったあの女が、お茶を持ってBさんの家に戻ってきたのではないか、そんな自分のくだらない妄想が現実味を帯びてくることに、Sさんは耐えられなかったのです。

次のページ 気まずそうに口を開いたOB