「ああ、くるしかったぁ~」

「……さんじゅうきゅう、よんじゅう、よんじゅういち、よんじゅうに、よんじゅうさん」

 ふらふらと揺れる体に合わせて、男がブツブツと数を数えていたのです。

 そして、こたつの一片が突然もこもこと膨らんだかと思うと――。

 ずるり……と人が出てきたのです。

「ああ、くるしかったぁ~」

 その顔がYさんの方を向きました。

「わっ、わあぁーーーーー!!」

 Yさんは大きな叫び声を上げて後ずさると、出っ張っていた敷居にかかとが引っかかってドタン! と音を立てて尻餅をついてしまいました。

 物音を聞きつけ、廊下の向こうの座敷からドタドタとやってくる大人たち。その中には心配そうな両親の顔もありました。

「どうしたの!? 大きな声出して……」

 Yさんは母に抱きつくと、部屋の中を指差して言いました。

「ひ、人が。知らない人がいた!」

「……人?」

 素っ頓狂な母の声。Yさんが視線を部屋に向けると、中には誰もいませんでした。

「お手伝いさんならみんな今は台所で食いもん作っとるすけ、こんなとこ来るわけねぇろ」

「子ども連れて来っけ、こうなるんだわ……」

「隠れるとこなんてねぇすけ。夢でも見とったんだろっかね」

 そう口々に漏らす親戚たち。

 Yさんは自分が見ているものが信じられず、母の腕からするりと体を引き抜くと部屋の中に再び足を踏み入れました。

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