#335 Cempedak Island(チェンペダック島、インドネシア)

 街遊びが楽しいシンガポールと組み合わせたい、とっておきのネイチャー島が今回ご紹介するチェンペダック・プライベート・アイランド。

 シンガポールからフェリーで渡るインドネシア・ビンタン島の、東沖約9kmに浮かぶ1島1リゾートの小さな島です。

 この海域の島々を1990年代に見出したのは、シンガポール在住・オーストラリア出身のビジネスマン。5つ星のリゾートにしようか? 海小屋風にするか? 悩んだ挙げ句、友人とシェアする、隠れ家的な海小屋を作ることに。

 まず、近隣のニコイ・アイランドを開業し、数々のアワードを獲得。その経験を活かしてさらに磨きをかけたのが、8年前に開業したこちら、チェンペダック・プライベート・アイランドです。

 どちらの島もザ・ロング・ランという世界的なエコツーリズムの組織に加盟しています。“SDGs”や“サステナブル”という言葉も、暮らしに溶け込んできましたが、この島を訪れて、ようやくその意味が実感できたような気がします。

 リゾートとして手を入れているのは、17ヘクタールの島のうち、南側の3分の1まで。残りは熱帯雨林で覆われ、花崗岩の巨岩の連なり(まるでセーシェルのよう)やマングローブの浜辺など多彩な自然環境が広がる、プライベート保護区となっています。

 おかげで島は動植物たちの楽園に。スタッフのデータによると、鳥類64種、蝶31種、爬虫類14種、哺乳類12種、魚類135種などが生息しています。なかには絶滅危惧種のセンザンコウ(アルマジロのような外見の哺乳類)やカワゴンドウの目撃談も!

 ある朝、テラスに出てみたら、聞きなれない野太い鳥の声が。なんとすぐ近くの木に立派なクチバシのサイチョウが止まっていました。スタッフの「いるんですよ」との言葉を半信半疑で聞いていたことを、深く反省。野生のサイチョウを初めて間近で目にしました。

 リゾートでは本島のビンタン島に7ヘクタールの土地を所有しています。そのうち3ヘクタールをパーマカルチャーに基づく野菜栽培や、900羽を飼育する養鶏場に、残りの熱帯雨林は保全しているそう。

 この養鶏場から月に7000個の卵、200羽分の鶏肉がリゾートへ送られ、自給率はほぼ100%。一方の野菜は35~45%。かつて畑の土は真っ赤な色で、作物を育てるには不向きだったそう。それを鶏糞や卵の殻や池の魚の糞を肥料として土にまき、7年かけて土壌を改善していったとか。

 水に関しては、ヴィラ内の飲料水はビンタン島から運んだもの。それ以外は、雨水や井戸水を使います。そのため水に関しては厳格です。洗濯による水の使用を減らすため、シーツの交換は必要な時のみのリクエストベース、毎日交換はしていません。ちなみにスタッフは島内での衣服の洗濯も禁止されているとか!?

2025.10.04(土)
文・撮影=古関千恵子