「悔しさ」をばねに。マジシャン役ならマジックは完璧に!

 今作で、福山雅治はマジックにも挑んでいる。監修のマジシャンKiLa氏から手ほどきを受け、撮影に入る2、3カ月前から練習に取り組んでいた。撮影を細かく分けて編集をする「カット割り」でマジックシーンを表現するのではなく、あくまで「ワンカット」にこだわったという。

「映画『ブラック・ショーマン』のダークヒーローを演じる際には、キャラクターが纏う雰囲気『ムード』にこだわりました。神尾武史という人物のムードを作るためには、『手技』が大切でした。

 例えば、刑事という役柄であれば、捜査をする場面だけではなく、オフの時でも刑事に見えるかどうかが大切です。神尾武史であれば、実際にカメラの前でマジックを披露することよりも、カメラが回っていないところでも、マジシャンとしての雰囲気を醸し出せるかどうかが重要でした。

 マジック監修のKiLaさんは『まずはコインロールをマスターしましょう。でもこれは、小学生くらいからやっていないと難しいんですよね』と……。そんなことを言われたら、まぁ、悔しいじゃないですか(笑)。そこから雨の日も風の日も、ライブ会場でも歩きながら、ひたすらコインを回し続けました。

 予告編で流れている、口から免許証を出すカードマジックも毎日必ず練習するようにしました。ま、仕事なので当たり前ですが(笑)。先日、プライベートの買い物でお会計をする際に、クレジットカードの出し方にやたらキレがあったようで、『福山さん、映画でマジシャン役なんでしょ。普段から役に入られているんですね』と笑われちゃいました」

 インタビュー中にはこんなことも。

「特別サービスです」と宣言し、取材陣の前でコインロール、コインを一瞬で消し去るリテンションバニッシュを披露。インタビュアーのクレジットカードを飲み込んで、口から出すなど、様々な手技を魅せてくれた。

 トップスターが纏うオーラが消え、「息を吐くように嘘をつく」どこか怪しげな元マジシャン神尾武史が、そこにいた。

2025.09.11(木)
文=「週刊文春」編集部