戦争を描いた作品に数多く出演してきた

 その後も二宮は戦争をテーマにした作品に継続的に出演し、自身の戦争観を深めている。2022年の映画『ラーゲリより愛を込めて』では、「僕は都度、戦争(映画)に呼ばれることがありますが、今回は戦争がもたらした後遺症の話だと思っているので、戦争によってこれだけのことが起こるんだということが少しでも伝われば嬉しいなと思います」と語り、戦争そのものの悲惨さだけでなく、その後遺症の苦悩にも目を向けている(映画.com、2022年10月25日)。

 また、自身が演じた山本幡男について「あまり完全な人にしたくなかったので。人間はどこか不完全で、だからこそ戦争が起きている。いくらいい人でも完全ではないから、人間らしい弱いところをちゃんと見せたいと思っていました」(ニューズウィーク日本版、2022年12月14日)と述べ、戦争を単純な善悪の対立ではなく、人間の複雑さから生まれる悲劇として捉える視点を示している。

 これはまさに『あんぱん』で嵩が語った「正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから」にも通じる価値観だろう。

 妻夫木聡と二宮和也。この二人が『あんぱん』で担ったのは、先輩、父という「個」を超えた、次世代への責任だった。戦争と平和、過去と現在、絶望と希望をつなぐ存在として、彼らは現代の視聴者に生きることの意味を問いかけ続けている。戦後80年という節目の年に、朝ドラで二人が果たした役割は実に大きい。

2025.08.28(木)
文=田幸和歌子