パンダによる需要急増でJALが臨時便を運航

 4頭の中国行きの発表からほどなくして、白浜と東京や大阪を結ぶ飛行機、高速バス、特急列車は、午前中に白浜に到着し、夕方、白浜を出発する場合の予約が困難に。白浜の宿泊施設も満室が増え、料金は高騰した。

 筆者は東京に住んでいるうえ、基本的に土日祝日しか自由に動けない。日本航空(JAL)が羽田空港と南紀白浜空港を1日3往復、運航している飛行機の予約を試みるも、午前中に白浜に着く便は、運賃が片道3万円以上でキャンセル待ち。電車なら2万円ほどだが、片道6~7時間かかるので前泊が必要になる。

 悩んでいたら、JALが5月24日(土)、26日(月)の臨時便を設定したので、5月24日(土)午前9時55分に南紀白浜空港に着く片道2万510円のチケットを購入。南紀白浜空港に到着すると、臨時便のため、和歌山県の職員の方々が盛大に出迎え、観光案内のパンフレットと、和歌山観光PRシンボルキャラクター「わかぱん」のグッズを乗客にプレゼントしてくれた。

 アドベンチャーワールドのパンダの経済効果について、関西大学の宮本勝浩名誉教授は、1994年9月からの約31年間で約1256億5741万円に上ると推定したことを、同大学が今年6月16日(月)に公表している。

 アドベンチャーワールドに到着すると、パンダ観覧はもちろん、飲食店にも長蛇の列。筆者は昼食のため1時間並んだ。閉園の午後5時前にパンダグッズを買おうとパーク内の店舗へ行くと、レジ前にまたもや長い行列。ホテルの近くに停まる最終バスに乗り遅れそうだったので、購入は諦めた。

 翌5月25日(日)は、4頭を屋外で観覧できる最後の日。翌26日(月)から渡航まで、4頭は隔離されて検疫を受ける。するとガラス越しで観覧しづらくなるので、25日(日)は、いつにも増して、混雑が予想された。

 路線バスが運行していない朝早い時刻は、アドベンチャーワールドへ向かう乗客で、白浜のタクシーの予約はいっぱい。白浜町は人口約2万人のうえ、住民の主な移動手段は自家用車。タクシーの台数は多くない。筆者は、なんとか予約できたタクシーでホテルから向かい、午前6時40分ごろパークの入口前に到着すると、すでに50人以上が並んでいた。

 開園は通常、午前10時だが、この日は午前9時。パンダの飼育施設は2カ所ある。良浜と彩浜が暮らす「ブリーディングセンター」でのパンダの公開は通常、午後3時30分までだが、この日は異例の午後4時30分まで。もう1カ所の「パンダラブ」には結浜と楓浜がいて、こちらは通常も午後4時30分までだ。

 夕方、「パンダラブ」へ行くと、楓浜が屋外で食事中。時おり散歩もしている。雨にもかかわらず、広い観覧エリアには人垣ができ、観客は、日本で最後となる楓浜の屋外での姿を目に焼き付けていた。

 筆者は後ろ髪を引かれる思いでアドベンチャーワールドをあとにし、白浜駅を午後5時20分に出発する特急列車「パンダくろしお」と新幹線で帰京した。JR西日本は、「パンダくろしお」の運行継続を6月26日(木)に発表。「アドベンチャーワールドにパンダがいる」と誤認されないように、適切な対応を講じるとしている。

2025.08.22(金)
文・撮影=中川美帆