「成都ジャイアントパンダ繁育研究基地」(以下、成都基地)には、公開・非公開のエリアを合わせて200頭以上のパンダがいます。公開エリアでも、同じ日に全てのパンダを観覧することは、ほぼ不可能。暑い日は特に難しくなります。

 理由を少し説明しましょう。公開エリアには約20カ所のパンダ舎があり、そのパンダ舎の多くは、パンダの数よりも、屋内で観覧できるパンダの部屋数のほうが少ない状況です。中には、屋内で一切観覧できないパンダ舎もあります。

 パンダは暑さが苦手で、暑いと冷房の効いた屋内で過ごします。すると、屋外の公開エリアにパンダを出せないので、観覧できるパンダの数は基本的に減ります。成都基地によると、パンダを屋内に入れる基準の温度(地上1.5mの木陰で測定)は26度。なお、屋外でパンダがいる場所は植物が多いため、観覧者がいる場所よりも一般的に体感温度が低いとのことです。また、気温に関係なく、パンダが息切れといった不快な症状を示したら屋内に入れるなど、柔軟に対応しているそうです。

 ちなみにパンダは単独で生きるので、子育て中などの特別な時期を除き、個室が必要です。成都基地がどのパンダを公開するかは、日や時間によって変わります。

 筆者は、2007年1月以降、成都基地に何度も足を運びました。直近の約2年間では、2023年6月と10月、昨年12月、今年4月に単独で訪れましたが、2023年2月にアドベンチャーワールドから渡航した桜浜(おうひん)と桃浜(とうひん)を観覧できたのは同年10月だけ。今年4月30日(水)の訪問時は気温30度超で、東京と比べ非常に暑く、日差しも強烈でした。桜浜と桃浜がいる「望月館」の屋外にパンダは皆無。「望月館」の屋内で観覧できる2室には、福娃(フーウァ)と園月(ユェンユエ)がいました。

 一方、この日は「星漢館」で雄浜(ゆうひん)、「秋月館」で幸浜(こうひん)を観覧できました。なお、「秋月館」の屋外では昨年12月に隆浜(りゅうひん)を観覧しましたが、今年4月の訪問時は公開されていませんでした。

 雄浜は、アドベンチャーワールドで初めて生まれたオスのパンダ。幼い頃は、姉の良浜(らうひん)と一緒に過ごしていました。通常、双子ではないきょうだいを同居させることはありませんが、良浜は2000年9月生まれ、雄浜は2001年12月生まれで近く、体格差が小さかったので、同居が可能でした。成都基地の雄浜のネームプレートには、「国外からパンダ基地に返還された最初のパンダ」と記されています。

  成都基地の公式プラットフォームによると、7月27日(日)時点では、「星漢館」には雄浜のほか、雄浜の息子の大毛(ダーマオ)、ドイツのベルリン動物園で生まれた夢円(モンユエン)などもいます(以下、特に記載がなければ、成都基地でのパンダの配置は7月27日(日)時点の同基地の公式プラットフォームに基づきます。なお、公式プラットフォーム上で公開エリアのパンダ舎にいることになっていても、公開されるとは限りません)。筆者は、大毛を2015年11月にカナダのトロント動物園で、2019年4月にカルガリー動物園で観覧し、夢円を2020年2月にベルリン動物園で観覧しましたが、大毛も夢円も成都基地では一度も観覧できていません。

2025.08.09(土)
文・撮影=中川美帆