最大の違いは、肉体がさらされるか否か
そんな「ねずみ男」の役作りについて尋ねると、
大塚 観客の皆さんは「ねずみ男」がどういうキャラクターか、よく知っていますね。それはアドバンテージだと思っています。何もないところで始めるよりは、楽できるかなって(笑)。それは冗談ですが、見る側にある程度の下地があるというのは、やはり大きいですね。

前回の舞台では、タレントの藤井隆がねずみ男を演じた。
大塚 僕には到底、藤井さんのあの軽やかさ、ひょうきんさみたいなものは出せないと思うんです。だから、違うところを考えなきゃいけない。そこら辺が今回の試練ですね。ダークな部分を見せるのもいいですね。妖怪から一人前扱いされないし、人間の中では半分妖怪という孤独や、誰にも相手にされない恨み、そして何者にも束縛されない自由。そんなものがやれたら楽しいだろうな、というのは前から思っていました。
声優としての仕事と、舞台などでの俳優の仕事を並行して行ってきた。両者の違いはどんなところにあるのだろうか。
大塚 もちろん最大の違いは、肉体がさらされるか否かです。アニメの絵は、すでに強調するところは強調され、キャラクター化されたもの。演技は当然そこに寸法を合わせていかないと、セリフが追いついていない感じになる。でも舞台の場合は生身がさらされているので、セリフの部分だけキャラクター化されたものを乗っけても、リアリティがなくなってしまう。ビジュアルと音とをどこで寄り添わせるのがいいか、それを探るのが稽古ということになるんでしょう。
2025.08.15(金)
文=週刊文春CINEMAオンライン編集部